第9話 心の中の言葉を()で囲まない。
この段落は、初心者によくあるゲーム的な文脈での()の乱用を避け、ひとまず人称の固定や地の文での描写を覚えることを優先する目的で書かれています。
国民的な大作家の方の作品で、括弧が効果的に使われていることもあります。また、昨今のラノベでは()で囲むほうがメジャーな書き方なのかしれません。
作者の独断と偏見に満ちた段落であることはご承知ください。
描写の中でも、心理描写。これは小説の見せ場です。しかし往々にして、心理描写で手を抜きたがる傾向が作者にはあります。心理描写は、登場人物に感情移入して書かないといけないので、疲れてしまうのです。この連載を読んでいる方も、身に覚えがあるかと思います。
(まあしょうがないでしょ。実力ないんだし)
(唐突に心理描写が重要だとか言われてもねえ)
このような表現を使う作品がありますが、基本的に反則です。よっぽどコメディやギャグ寄りでないかぎり、このような表現は「手を抜いている」と思われかねません。
何も特別に工夫を凝らすことなく、地の文で書いてしまうというのが簡単です。
まあしょうがないでしょ。実力ないんだし。と私は思った。
唐突に心理描写が重要だとか言われてもねえ。B子はそんな顔をしている。
人称にもよりますが、上記のように地の文に紛れ込ませると、話がぐっと引き立ちます。
とはいえ、一人称では上のように書けばよいですが、三人称では、主人公の心理描写がずっと難しくなります。三人称では基本的に第三者視点で物語が進むので、「主人公が何々と思った」と断定しづらいのです。せいぜい「主人公の顔が曇った」「主人公は何かを閃いたようだった」くらいしか書けません。
この部分を混同した三人称単視点(背後霊型)、三人称多視点(ザッピング型)、三人称神視点(歴史モノ、神話など)の良し悪しについては、後ほどまた取り上げます。
比喩や風景描写を通じて、心理描写するという手法もあります。「今日は雨。」という文で、憂鬱な気分を表したりするのはありきたりですが、「雨の日の登校では、似合いもしないレインコートを着なければならない。」などと登場人物に愚痴らせることでオリジナリティのある憂鬱さを演出できるかもしれません。
大抵の場合、物事を明るい方向に描写すると気分の快活さを、暗い方向に描写すると気分の憂鬱さを、表現できます。「バケツをひっくりかえしたような雨」とすれば豪雨でも前向きな、「どこまでもしつこく染み通ってくる雨」とすれば霧雨でも後ろ向きな気分になります。
こういう描写が上手い人は、往々にして普段から筆力が高いものです。描写民族サ○ヤ人です。普段からフルパワーで、実力を隠すということを知りません。しかしここ、カクヨムにおいては、あまり抽象的に書き連ねるのも考えものです。「主人公の気持ちが分からない」「もっと主人公の気持ちをストレートに書いたほうがいいと思います」などとマジレス感想をつけられて、リアルに凹みかねません。
ともかく、心理描写は心理描写で、非常に重要なポイントです。ここで手抜きをせずに、きっちりと地の文を膨らませられるかが、作者の力量であると言えます。
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