第8話・天地をひっくり返す

《失敬な!おじさんは人間だぞ!。…ただね…二つだけ教えておこうかな!白玉風にね。一つ、この刀はちょっと訳ありな刀で…まぁ妖刀とでも言っておくか?津鏡雪白と共鳴する刀って事なんだけど…八郎がいるからこれ以上は言えないな。二つ、この剣気は…抑えてるつもりなんだがな?話は以上なんでな!そろそろあの世に行かないか?化け猫‼︎》


妖刀雪白が青白く発光した瞬間にズバッと音が鳴り、直後に黒玉の波動をまとう硬い尻尾が千切れ飛んだ。国正の楽観的にも思える軽い斬撃は戦況の天地をひっくり返してしまう。

黒玉はその強力な波動が直撃して地面に叩きつけられた。


国正は、雪白を見つめながら何かを話している。そして、白玉と八郎を見つめて笑顔になった。


《あ。八郎よ、白玉ちゃんはそのままだと死んじゃうから。……接吻キスしときなさい。》


《⌘…》


《⁑親父……様?えっ!今なんて?》


国正は、とぼけた顔で豪快に笑った。そして…


《八郎!照れるな!早く白玉と接吻をするのじゃ!》


刀の切れ味も天地をひっくり返すが色々な意味でも天地をひっくり返してしまう国正に、八郎と白玉は死闘の真っ只中で唖然となった。時が止まるとは正にこの事を言うのだと白玉と八郎は知った。


《⁑父上様?接吻と突然言われましても…》


《しないのか?白玉が死んでも良いのか?》


《⁑いえ、こういう大切な事は…》


国正は八郎がしどろもどろになる姿を見て笑顔になった。

そしてまた、妖刀雪白を見つめて何かを話している。

八郎は雪白と話す国正を見て自然と笑顔になっていた。しかし何故かは自分でも分からなかった。

国正は雪白に頷くと八郎を鋭く優しい眼光で見つめた。


《そうだな…雪白。》《⁑親父様?》


国正は八郎に向かいゆっくり歩き出した。黒玉は波動の直撃後に体から煙のような物を出しながら横たわり動かない。


《⁑親父様…っ。》


八郎は、国正が近づくにつれて感じる物凄い剣気に圧倒されて体が思うように動かない。

八郎は白玉の前足を握りながら国正を待つしかできなかった。


《よし!八郎よ。お前の剣と、この…雪白を交換してくれ。前からお前の剣が欲しかったんじゃ!いいな?。》


国正は歩きながらそう話すと雪白を突然ヒョイっと八郎に投げたのである。津鏡一族の家宝、雪白を、一族の長が突然投げたので八郎はとっさに両手を雪白に伸ばし絶対に落とさないように注意した。


《⁑そんな!親父様!うぁぁあぁあ!》


両手を全力で伸ばし雪白を受け止めようとしたその瞬間である。八郎の視界に白玉を手にした国正が突然現れて白玉の顔を八郎の顔に押し当てた。


《⁑……チュ!?》《⌘……チュ…》《よぉ〜し!》


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