第31話

「チフン、ご家族の写真見せてよ。」

チフンはスマホを開き、私に見せる。

やっぱりチフンだけ、4人の中で際立って美形過ぎる。

「お姉さんは、いくつ?」

「2つ上。」

「結婚は?」

「してない。教会で働いてましゅよ。お父さんは、僕にパイロットになって欲しかったけど、ちょっと無理みたいでしゅねー。」

・・・あたりまえだよ。

心の中でため息をつく。

「チフンは、接客が上手だから、キャビンアテンダントがいいよ。」

「そうでしゅね。それで、オーストラリアの方が航空会社に入りやすいから、行くでしゅよ。」

・・・甘い。バカ過ぎる。

再び、心のため息。

そのバカに金貸す私は、もっとバカだ・・・。

「うん、チフン頑張って。」

女の子を呼び、飲み物を注文する。

「チフン、コーラ?」

「はい。」

「コーラとウーロンハイお願いします。」

「はい。」

するとチフンは、女の子に向かって、身を乗り出すようにして、笑顔で口を開く。

「お願いしましゅね。」

チフンを上目遣いに見た女の子の頬が、みるみる赤くなっていくのが、わかった。

やっぱ、相当イケメン自覚してるじゃん。

私はメニューを取り上げ、「ねえ、チフン。これがオーストラリアだとすると、チフンが行く所はどこ?」

「えっと、メルボルンはここでしゅね。」

チフンは、右下を指さす。

「そっか、そんな遠い所に行っちゃうんだ・・・。」

「ミッちゃん、お別れじゃないから、僕の出発を喜んで。」

「うん。」

「お父さんが、来年60歳になりましゅ。6月に家族で写真撮りたいから、韓国帰る前に、2日ぐらい日本に寄りましゅよ。安いチケット取れるから。」

「そうなの?」

「その時、ミッちゃん会いたいでしゅねー。」

どうだかねー。

「壁の修理代は、いくらだった?」

「3万でした。よかったでしゅよ。もっと高くなくて。」

「そっか。」

チフンは、楽しそうに話始める。

「ソンドルの店長夫妻は、来月韓国で式を挙げましゅ。でも僕はその頃、もうオーストラリアにいるので、先にお祝いをあげました。韓国では1人3万円あげるけど、僕は2人とも知り合いなので、6万円あげました。2人とも、びっくりしてたでしゅよ。」

得意そうにチフンは話続ける。

「・・・。」

私は今、明らかに目が点になっているはず。

「結婚式に出られなくて申し訳ないので、新宿の家電量販店で、テレビも買ってあげました。」

自分でも不思議なくらい、冷静に驚きを隠していた。

「そうなんだ。」

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