第28話

8月14日

午後9時。

チフンのことが気になって、仕方がなかった。

部屋の点検は、大丈夫だったのかなぁ?

チフンに電話をする。

3回目のコールのあと、チフンの声が聞こえた。

「ミッちゃん?」

「うん、チフン引っ越しは終わったの?」

「うん、今、ソンドルの店長の家でしゅ。2人とも仕事だから、僕1人でしゅよ。」

「そうなんだ。点検はどうだった?3万円で足りたの?」

「それが、思ってたよりも良くなくて・・・」

「足りなかったの?」

「うん。」

「大丈夫?貸そうか?」

「本当でしゅか?いくらまで貸せましゅか?」

「チフン、いくら必要なの?言ってよ、ちゃんと。」

「えーと、15万とか20万・・・」

一気に気持ちが落ち込んだ。

「チフン、それって部屋の点検で必要なお金じゃないよね。嘘つかないでよ。涙出てきそうだよ。」

「・・・・」

「何に使うの?」

「えっと、ごめんなしゃい。オーストラリアの飛行機代とか、足りなくて。」

今さら飛行機代?

家具の運賃に、飛行機代に・・・。

一体、何考えてオーストラリア行きを決断したんだか・・・。

バカじゃないの?この男。

イイ年して・・・。

まったく、こっちが情けなくなってくる。

涙がどっと溢れてきた。

「チフン、私を騙そうとしたの?」

「違いましゅ、違いましゅ。ミッちゃん泣かないでくだしゃい。ごめんなしゃい、本当にごめんなしゃい。忘れてくだしゃい。」

「チフン、今まで私に何嘘ついた?」

「何もついてないよ。」

ざけんな、この嘘の塊男。

「私のパート代は、月8万円だよ。私がもっと金持ちマダムだったら良かったのにね。」

「・・・・」

「私は、チフンの何?」

「大事な友達だよ。」

嘘つき。

「じゃ、チフンの友達、例えばソンドルの店長に、私のこと紹介できる?」

「できるよ。」

「じゃ、今度お店行くから、わかるようにちゃんと連絡しといてよ。」

「いいよ。」

「日曜日は、6時?7時?」

「どっちでもいいよ。」

「じゃ、7時に中井駅ね。おやすみなさい。」

一方的に電話を切る。

涙が止まらなかった。

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