第28話 ユキの決意編(4)

「さっ、三か月って……三日の間違いだろ?」



ジュンペイは、今のは自分の聞き間違えか、もしくはユキの言い間違えではないのかと、祈る思いで確認を取る。



「ううん、間違いじゃないよ。三か月間ぐらい向こうの家に行ってこようと思っているの」



「……どういうことだよ?」



「ちょっと待ってね、もう少しで書き終わるから」



ユキは手を動かし下を向いたまま、たんたんとした口調で言った。ジュンペイはそんな彼女の態度に苛立いらだちを覚え、向かいまで行くと家計簿を取り上げた。



「ちょっと何するの! 家計簿無かったらどんぶり勘定になっちゃうじゃない! 主婦を甘く見ないで!」



ジュンペイは、ユキの言っていることはとても的を射ているとは言い難いと思った。だが、彼女の鬼気迫る物言いにたじろいだ彼は、思わず後ずさりしてしまった。



「ごっ、ごめん」



ジュンペイはとっさに謝ると、家計簿を元の位置に戻した。



「……作業の邪魔をしたのは悪かった。でも、サチコさんに三か月も泊まるってどういうことですか?」



ジュンペイは変にユキを刺激しないように、下手に出て様子をうかがう。



「このままの生活を続けていたら、私たち、きっと駄目になっちゃうような気がするの」



ユキはジュンペイの目を見て、いつになく真剣な表情で言った。



「駄目になるって……」



ジュンペイは途中まで言いかけたっきり言葉が途中で止まってしまった。数秒後の彼女がどんなことを口にするのかが怖く、まるで金縛りにあったかのようにカラダ全体がいうことをきかない。彼は右手をダイニングテーブルの上に乗っけているが、まるで“テーブルを買った時にオマケで付いてきたインテリアの像”のようである。



「ジュンちゃん、大丈夫?」



「……おっ、おう」



ジュンペイは、一応は我を取り戻した。



「つっ、続きを聞かせてほしい」



「うん。何ヵ月か前に、ジュンちゃんのことを拒んだことがあったでしょ」



「あのことだったらもう……」



「あの日を堺にさ、お互いの心と心の間に壁が出来てしまったと思うの。ワタシのせいでごめんなさい」



「あの日は、オレがバスローブなんか着て調子こいたのが悪いんだよ」



「フォローしてくれてありがとう。あの日から今日までさ、二人とも、表向きでは楽しくて幸せな夫婦を演じているのかなぁって思ったの。だけど、本心ではそれは違うと感じていて、なんていうか、お互い結婚生活を維持するために無理して取りつくろっているのかなかなっていう気がして、それが本当のところなんじゃないかな」



「……そうだったのかもしれないけど、こうやって正直な気持ちを口に出し合って、これから改めていけばいいんじゃないのか? それに、離れて暮らしたら夫婦の意味がないじゃないか」



ジュンペイは、ユキに思い止まってもらえるよう、必死に訴えた。



「それでさ、このままじゃいけないと思ってワタシなりに考えたの、この先どのようにすれば上手くやっていけるのかっていう“結婚観”を」



「なんだよ“結婚観”って?」



ジュンペイはユキが調子のいいように言って、それを口実に自分を丸め込もうとしているのではないのかと思い、警戒心を強めて身構えた。

















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