第14話 心の仮面編(1)
ジュンペイは、結局この日、一滴も体にアルコールを入れずに家に帰った。彼が家のドアを開け玄関に入ると、ユキが二日酔いに効果のあるドリンクを手渡してくれた。
「いゃ~、すっかり出来上がっちゃったよ。助かるわ。ユキ、ありがとな!」
ジュンペイの心は
「先にお風呂に入る?」
ユキは明るい口調で言った。
「そうだね、酔って頭がボ~っとするから、軽くシャワーだけでも浴びようかな」
どういうわけか、ジュンペイの顔が少し赤く
「ごめん。酔っぱらってるのに、湯船につかるのは危ないよね」
「別に
ジュンペイは、優しい口調で言った。
「うん、そうだね!」
二人は、心に仮面を被っているような感覚を覚えていた。
それから二ヶ月程が経ち、お互いに態度には出さないが、その事が逆に
「行ってらっしゃい! 気をつけてね」
「おう、行ってきます!」
ドアを閉めた後、ジュンペイは深いタメ息をつき、会社へと向かった。
出勤すると、会社では周りの人に迷惑かけられないと、明るく振る舞っていた。彼はパソコンを起動し、キーボードを打ち始めた。少し離れた席に座るヤナセの耳には、ジュンペイの打つキーボードの音から、数ヶ月前のような
お昼時になり、ヤナセはジュンペイを昼食に誘おうと、席を立った。彼の近くまで来たところで、オフィスの中に
「タカオカさん! あなたやる気あるの!
ちゃんと指示したとおりのことやってちょうだい!」
怒鳴り声が聞こえ、オフィスにいる人全員が、声のする方に視線を向けた。
「申し訳ございません! すぐに作成し直してきます」
アヤは頭を下げ、作成した資料を持ち、自分の席へと戻った。
「タカオカさん、
ヤナセは、ジュンペイに向かって心配そうな口調で言った。
「タカオカさんは、ミスなく
ジュンペイは、怒りを押し殺すようにヤナセに返した。
「お
ヤナセが言う。
「アイツのせいで、今までに何人の女性従業員が辞めていったと思っているんですか」
ジュンペイが言う。
「あ~ムカつく」
コンビで言う。
シバタは席に戻り、パソコンに向かって資料を手直ししているアヤの横に立った。すると、椅子に座っているアヤを上から見下ろすように、腕組をして
「バカじゃないの!」
シバタは、吐き捨てるように言った。
「えっ?」
アヤは作業の手を止め、ひきつった表情で
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