第11話 風向きの変わる予感編(2)

「別に、付き合っていたとか、そういったことはありません」



「そうか」



ヤナセは、『結局、本当のことは話してくれないんだな』といった顔をした。



「そんなめた顔しないで下さいよ。今から、ちゃんと話そうと思ってるんですから」



「そうか」



ヤナセの『そうか』は八秒前のとは違い、『結局、本当のこと話す気になったんだな。男らしいじゃないか』といったような顔に変わった。



「正確に言えば、当時、付き合うことはなかったんですけど、タカオカさんのことが好きでした。もちろん、友達としてではなく、異性としてです」



「好きになった、きっかけなんかは覚えているのか?」



ヤナセ刑事による誘導尋問ゆうどうじんもんが開始された。



「中学三年の時に行った修学旅行がきっかけです。タカオカさんのことは、中学二年の時に同じクラスになってから知りました。でも、まともに話したことはなく、『消しゴム貸して?』ぐらいのレベルの話ぐらいしかした記憶はありません。その旅行で同じグループになり、その時、初めてまともな会話をしました」



「その時に話したのがキッカケで恋したんだな?」



「いえ、その時は、恋ではなく友達としての好意だったと思います。フィーリングが合うな、ぐらいの、そんなに深い感情ではありませんでした」



「修学旅行がキッカケって言ったよな!?」



ヤナセのボルテージが上がり、声のボリュームが大きめになる。



「修学旅行で同じグループになっていなかったら、たぶん、その後まともに話すこともなかったと思います。だから、キッカケだったんだと思います」



アヤも初めて聞く話だったので、料理を食べる手を止めて、食い入るようにジュンペイの顔を見ている。



「それ以後タカオカさんとは、グループの中の一人てして、放課後や休みの日にもよく遊ぶようになりました」



ヤナセは、聞き漏らしをしたくないためか、恋人同士の距離までジュンペイに近づいた。



「ヤナセさん、近いです」



「……すまんすまん」



同僚どうりょうに戻った。



「その後、タカオカさんとは同じ高校に進学しました。そして、一年の夏休みに、恋は突然にやって来ました」



いよいよ話しが核心にせまるころ、ジュンペイは、あの頃にタイムスリップしたかのような感覚になり、アヤに目をやると、あの頃の少女がの姿が浮かんでいた。彼女もまた、今よりもちょっとだけヤンチャな、あの頃のジュンペイを感じでいた。

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