第7話 新婚生活編(3)
ジュンペイは、カミングアウトする時のような深刻そうな口調ではない。
「一度も無いっていうのは、“あれ”のことか?」
「はい。たぶん、“あれ”のことだと思います」
「……マズゥ、うわ皮! って、そんなことはどうでもいいんだ。それより……大丈夫なのか?」
「大丈夫なのかって、やっぱり、おかしなことだと思いますか?」
「いやっ、夫婦には色々な形があると思うから、おかしなことだとは思わないよ」
ヤナセは、この話題には深く切り込まず、ここで止めておこうとした。しかし……
「……あのよ、人のプライベートな事に口出しするのは、あまり望ましいことだとは思わないんだが。でもよ……気になるんだ! 気になってきかずにはいられないんだ! サクラギ、カミさんとは上手くいってるのか!?」
ヤナセは、ありったけの興味をジュンペイに投げ掛けた。
「まぁ、“あれ”は無いんですけど、楽しくやってますよ。でも、ヤナセさんは正直、変だと思いますか?」
ジュンペイは、ユキと出会ってからの約一年。“あれ”のことについては、疑問を
「ちょっと待ってくれ。少し考える時間をくれ」
そう言うとヤナセは腕組みをし、目を閉じたっきり黙り込んでしまった。
「……ヤナセさん? これってもしかして、何回も再放送されている、あの人気アニメの再現ですか?」
ヤナセは集中している為か、ジュンペイの問いにも
「さっきも言ったと思うけど、夫婦の数だけ色々な形があると思うんだ。これはオレ個人の考え方だけど、例えばコンビニに買い物に行って、レジの横にある肉まんを注文したとする。そしたら店員のお兄さんが『肉まんですね」って答えるところを、『肉まんでござるな』って接客する。つまりそういうことだと思うんだ」
ジュンペイは、ヤナセが何を言いたいのかがよく分からなかった。ヤナセもまた、自分が何を言っているのかよく分からなかった。
「色々と心配してくれてありがとうございます。帰ったら、今日は
「そうだよ! その
「ところで、ヤナセさんは結婚して今年で六年目でしたっけ? 奥さんとの“あれ”はどうなんですか?」
「
「付き合っている時期、新婚の頃はどうだったんですか?」
「そりゃ~、もう、ヤナセ
ヤナセは恥ずかしげもなく
今日の仕事帰りの一杯は、いつもよりも少しだけ深い話しとなった。
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