第4話 プロポーズ編(4)
「……えっ。ユキさん?」
ジュンペイは、急すぎる展開に状況を
「そうですか、『サクラギ ユキ』素敵な名前ですね……ておいっ!!」
ジュンペイは、ユキの言葉を理解すると、驚きのあまり目をまるくし、ポカンと口を開いたまま彼女の顔を
「……ユキさん、言っていることがいまいち理解しきれていないみたいなんですが……ひょっとして、
ジュンペイは、半信半疑の心理状態できいた。
「うん! 結婚しよう。今ならもれなく、家具やら電化製品、それに女性ものの服や下着までもが付いてきちゃいます」
「……よっしゃぁ~!!」
なんとなく状況を飲み込めたジュンペイは、右手で拳をつくり、胸の辺りにもっていき
「ユキさん、どうしてこうもあっさりと……」
ジュンペイは、自分が世間の常識とは程遠い言動をとったにもかかわらず、ユキがそれに乗っかってきたことに、動揺を隠せないといった様子である。
「うん、実はね、私もジュンペイ君に一目惚れしてたの。ただ……
ジュンペイは、『ごもっともです、おっしゃるとおりです』といったよに
「でも、運命の相手だったら時間が短いとか、会った回数が少ないとか、そんなこと関係ないよね。お互いに一目惚れだったんなら、きっと運命の相手なんだよ」
二人はしばらくの間、ベンチに隣り合わせに座りながら同じ
「……ジュンペイ君?」
ユキの声とともに、現実の時間が再開される。
「どうしました?」
「これから夫婦になるんだから、例の
「例の儀式って……なんですか?」
ジュンペイには、ユキの言っている儀式がなんなのか見当もつかない。
「儀式っていったら名前でしょ~」
「えっ、名前?」
「結婚したらこの先、何万、何十万回と呼び合うことになるんだから、一番大切なことでしょ?」
「まぁ、一番っていうのはどうかと思いますけど、確かに大切なことですよね」
ジュンペイは、少し大げさだと思いつつも納得した。
「それじゃあ、ジュンペイ君のことはなんて呼んだらいいかな?」
「そうですねぇ~。周りからは、『ジュンペイ』か『ジュンちゃん』って言われることが多いです。なので『ジュンちゃん』を希望します』
「ジュンちゃんかぁ~。可愛いね!」
「そうですかぁ~。可愛いとか言われると、なんか
ジュンペイは本当に照れている。
「ユキさんのことは、なんて呼べばいいですか?」
「私は、そうだなぁ~、ユキだから……それじゃあ『マ~
「マ~坊か、
ジュンペイはツッコんでいるわけではなく、本気で
「冗談だよ。ジュンちゃん、そんな必死な顔しなくたって」
ユキは笑いながら言った。
「そりゃ必死になりますよ!」
「ごめんごめん。私は普通に『ユキ』がいいな」
「よかった、それではユキさんのままで」
「ジュンちゃん、違うでしょ」
ジュンペイは、何が違うのか分からず何も返せない。
「『ユキさん』じゃなくて『ユキ』だよ! 結婚して一緒に住むのに『さん』はおかしいでしょ」
「確かにそうですよね」
ジュンペイは納得した。
「それと、もうひとつ大切なこと言い忘れていたんだけど……」
ユキは今までとは打って変わり、
「なっ、なんですか?」
ジュンペイは急なユキの変わりように、『実はウソ、ドッキリでした』というような展開になるのではないかと、ドキドキしながら続きを待った。
「結婚するんだから、今まで通りにはいかないよ。敬語は、止めようね」
「……言い忘れてたことって、そんなことなんですか?」
ジュンペイは、拍子抜けというよりは安心した。
「敬語は、止めようね」
「あっ、はい。じゃなくて、おっ、おう!」
「ジュンちゃん、そろそろ行くよ」
そう言うと、ユキはベンチから立ちあがり歩き出した。
「ちょっとユキさん、じゃなくてユキ。待って下さい、違う、まっ、待てよ」
ジュンペイは、ユキがどこへ向かうのか分からないまま公園を後にした。
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