第2話 プロポーズ編(2)

「ジュンペイ君って面白いね。経理マンっていうよりも、宇宙飛行士って感じ! 私を銀河系へ連れていって下さい」



「えっ!」



ジュンペイは真剣に考えこむ。(これは、ユキさんのボケなのか? それとも、宇宙飛行士といえば某、大ヒット映画では人類を救う。てことは、地球的にカッコイイ男ってことなのか……)恋する青年の心理状態は、正常ではなかった。



「え、どうしたの、急に深刻な顔しちゃって?」



ユキは、笑いながら右手でジュンペイの肩を軽く叩いた。



「い、いや、宇宙飛行士って……」



ジュンペイは、ボソボソとそう言いながらユキの顔を見た。



「えっ、そこなのぉ! 冗談じょうだんだよ、冗談。ハッタリ!」



「じょ、冗談って。ユキさん、心臓に悪いですよ」



ユキには、ジュンペイの言っていることがよく分からなかった。



「ホント、ジュンペイ君と話していると楽しいな」



ジュンペイは、ユキの言葉が嬉しかったが、どう表現したらよいかわからず、下を向き、まるで魂を抜かれたかのような無表情でだまりこんだ。



「どうしたのぉ~!」



ユキは優しい笑顔で、うつむいたジュンペイの顔を下からのぞきこんだ。



「なんすか」



ジュンペイはさらに目をつぶって、ユキから逃げる。



「ジュンペイ君、子供みたい! ジュンペイちゃん、ミルクの時間ですよぉ~」



ユキは面白そうにジュンペイをからかう。



「ユキさんのバカ……バカ! バカ! バカ! バカ! バカ!」



ジュンペイは、下を向き目をつぶったまま、からかわれて悔しかったので、『バカマシンガン』で面子 めんつを保とうとした。



はずみのついたジュンペイの心に火がついた。今の彼に、恐れるものなどなにもない。



ジュンペイは、ベンチに座っているユキの前へ行き、左膝ひだりひざを地面につき、両手で彼女の手をにぎろうとした。しかし、触れることをためらい、とっさに、ユキの履いているスニーカーの靴紐くつひもつかみ、彼女の左足を軽く持ち上げた。



「なにしてるの?」



ユキは、半笑いのような顔でジュンペイの顔を見た。



くつさん靴さんきいて下さい。じゃなくてユキさん!」



ジュンペイは、手で持ち上げていたユキの左足を降ろした。そして、ひざまずいたまま、ユキの瞳に真剣な眼差まなざしを向けた。



「あの! きいてほしいことがあります」



「うん。耳の穴かっぽじって、よくきくよ」



ユキは冗談まじりに言った。



「結婚してください!!」



しばしの沈黙が流れた。







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