シアワセ~ヌ? ヒゲキ~ノ? ~結婚のはなし~

須賀正俊

第1話 プロポーズ編(1)

「あっ! あっ! あっ! あのぉ~、おえっ! あっ、あの、あのですね」



まずい、出だしからしくじりかけているぞ! 一世一代の大勝負、あまりのプレッシャーに、頭の中が真っ白になりかけている。ジュンペイは、かろうじて人間を保っていた。



「え、どうしたの、急におろおろしちゃって。足でもつったの?」



ユキが不思議そうな顔をして言った。



無理もない。出会って六日目、初めてのデート? 真っ昼間の子供たちでにぎわっている、良く言えば無駄がない洗練された大人な公園。無難に言えば、近所にある狭くてショボい公園なんだが……。



そんな小舞台で今からプロポーズを受けることになるなんて、夢にも思っていないだろう。



「あっ、足でもつったのって、いやだなぁ~、俺、アキレス腱の達人ですよ……って、意味わかんないですよね。気にしないでください」



「アキレス腱の達人って……なにそれ」



ユキは楽しそうに微笑んでいる。彼女の優しい横顔を見ていると、ジュンペイは、落ち着きを取り戻せていけるのを感じていた。



「あっ、あの! ……肩の力を抜いて、かっ、かっ、肩の力を抜いて、耳の穴かっぽじって、よくきけぇ~」



( しっ、しまった、りきみすぎた)ジュンペイは、ベンチに座っているユキの真正面に立ち、右の手のひらを天に向かって振りかざし、顔を上げ『てやんでぇポーズ』を保ったまま激しく後悔した。



絶望の沈黙が、数秒続いた。



( 今日のところはめておこうかな)プロポーズモードからピクニックモードへと転換を図ろうとしたとき、いきなりユキがベンチの上に立ち上がった。



「みっ、耳の穴かっぽじって、よくきけぇ~ 」



ジュンペイと同じように、ユキは天に向かって『てやんでぇ~ポーズ』をとった。



予想だにしない展開に、ジュンペイは絶望の沈黙から、完全に時が止まってしまったように感じた。



「なんてね!」



ユキはおちゃらけて言った。



ジュンペイは、頭の中のユキからは想像出来なかった振る舞いに、『ギャップ……てゆうか別人だろ!』とツッコミたいところだか、恋の魔物にとりつかれている今の彼には、『ミス日本』のポージングにしか見えていない。



ユキは何事もなかったかのようにベンチに座った。



まぶしい! いい天気だね」



ユキは空を見て、右手で太陽の光をさえぎりながら嬉しそうに言った。



「ホント、いい天気ですねぇ~。今年を締めくくるにふさわしい青空ですよね。まだ七月ですけど」



「七月に締めくくるのは早いでしょ。無難に八月でしょ」



「そうですよね……。って変わんないだろっ!」



ジュンペイはユキのボケに、命を燃やし、全力でツッコんだ。



ユキは基本に忠実に舌を出し、『エヘッ!』というようなお茶目な顔をつくってみせた。
















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