第52話 最後のピースがはまるとき編(3)

水族館を出た二人は、その後、近くにあった美術館に行った。



お互い絵画にはこれといって興味があるわけではなく、作品ごとに足を止め、事務的に感想を言い合っては次のを観ていくというようにして美術館巡りを行っていた。



しかし、ある一枚の作品の前に立ち止まると、今までとは打って変わり、二人は無言でその絵を食い入るようにして観ていた。



そこに描かれていたのは、若い夫婦かカップルが、二人掛けのソファーに寄り添いながら座っており、お互いに表情が無く見つめ合っているというものである。



ジュンペイとアヤは、絵の中の二人が幸せそうに見えたが、それぞれ違う幸せを感じていた。



予約しておいたフランス料理店の入店時間に合わせて美術館を後にし、目的地へと向かった。



十九階建ての建物の最上階にある店内に入り案内された席に着くと、一日の疲れを癒すように、夜景を眺めながら料理が運ばれてくるのを待った。



「キレイだね」



「そうだな。手垢ひとつ見当たらないよくみがかれた窓ガラスだ」



「えっ?」



「 冗談だよ、ホントにキレイな夜景だよな」



そう言ったきり、二人は無言で同じ方角を眺めていた。



料理が運ばれてくると、これまでに会社であった事や、十代の頃の思いで話で盛り上がった。



コース料理が終わりに近づくにつれ、今日が過ぎれば、こうして二人っきりで会う事はもう無いであろうという予感が楽しい過去の話に寂しさを掛けていった。



そして、運ばれてきたデザートの盛り合わせを口にし始めると、アヤは黙り込んでしまい、寂しそうな目で料理を食べ続けた。



ジュンペイはアヤの表情を見て気持ちを察したが、自分の感情をそのまま言葉に出して伝えても良いのか迷い、彼もまた、俯いて黙々と食べ続けた。



結局、会話の途切れたまま次に出てきたコーヒーを飲み終え、最後のメニューの洋菓子がテーブルの上にセッティングされて食べ始めた。



「……ねぇ、このあと空いてる?」



ケーキを食べ終え、後は席を立ち上がるだけとなった時、アヤは慌てたような口調で言った。



「このあとは帰るだけだし……空いているっちゃ空いているけど……」



ジュンペイはアヤの目を見て自然な表情で答えたつもりだが、動揺を隠しきれずに目が泳いで視線が定まらない。



「話したいことがあるんだけど家に来てほしいの」



「……」



ジュンペイは予想していた台詞よりも重いものがアヤの口から出てきたため、この先の返答により、人生が百八十度変わってしまうかもしれないという恐怖心で凍りついてしまっている。



「お願いします」



「話したいことって、今じゃダメなの?」



彼は無意識に自分が悪者にならないよう、アヤがこの場では答えずらいであろう質問を投げかけ、このままうやむやにして話を終わらせようとした。



「だめ……どうしても二人っきりの場所で伝えたいことがあるの。お願いします」



「……はい」



ジュンペイは心に秘めている男としての下心も手伝ってか、アヤの圧力を前にもろくも屈してしまった。















































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