第41話 リアルネクタイ編(5)

朝食を終えて一休みすると、ヒメから最初となる鍛練のメニューが言い渡された。ジュンペイとヤナセは、準備を終えると言われるがままに事を開始した。



「以外に疲れるな!」



「そうですね! なんだか、鍛練の雰囲気じゃないですよね!」



「確かにその通りだな! これがよ、ホントのお寺だったら、長い廊下を中腰ダッシュで雑巾ぞうきんがけしているイメージがあって、まさに修行だよな!」



「そうですよね! 掃除機だと、こき使われている感が否めないですよね!」



「まったくだ! なんかよ! 無給で働かされているみたいだな!」



二人は、四階分ある建物の共有スペースの掃除機がけをすべて終えた。彼らは、使用後の掃除機のモーターと同じように、カラダにこもった熱を一刻も早く放出するため、一旦ユニフォームを脱ぎ捨て、トランクスと靴下だけは残した。そして、二人並んで踊り場に足を置き、階段に座った。男たちはしばらくの間、ヒメに見つからぬことを祈り、息をひそめて熱を逃がしていた。



「でもよ、鍛練って言われて最初は何させられるのかと思って不安だったけど、良かったな、意外に普通なことで」



「これだけ大きな建物を一人で切り盛りしてるんですから、結構まともな人なんですよ、きっと」



二人は再びユニフォームを着用すると、ヒメの元へと向かった。



「廊下の掃除機がけ終了しました!」



「二人で作業していたわりには、ちょっと時間がかかり過ぎじゃないの。どこかで道草を食っていたんじゃないですか」



ヒメは不誠実には敏感である。



「いえ! 道草など食っていません! ヒメに喜んで頂きたくて、二周してきました!」



「あなたたち、私を甘く見ているんじゃないの。ウソをつきなさい! ウソつきはアップップですよ!」



ヒメはそう言うとほほを膨らませ、エサを蓄えているリスのマネをした。



「まさかカメラでも付いているんですか? そんなこと聞かされていませんよ。ヒメ、プライバシー、バンザーイ!」



ヤナセは、両手を上げて“バンザーイ・アクション”で権利を主張した。



「カメラなんか付いていませんよ! あなたたち、色が違うのよ!」



「……あっ」



どうやら、変身を間違えてしまったようだ。



ニュー“金”と“黒”は、嘘がバレた傷も癒えぬまま、次の鍛練を命じられ、体育室へと移動した。そして、修行に入った。



「サクラギ、俺たちはいったい何をしているんだ!?」



「これ、設計図どおりにやっていたら、失敗したら今日中に終わらないですよ!」



「朝から中腰ばっかだけどよ、そろそろヤバくなってきたな!?」



「まったくですよ! いったい、この作業を終えた先には何が待っているっていうんですか!」



「……うわぁやっちまった!」



「まじっすか! まぁ、気長に行きましょう!」



「本当にすまん!」



「ヤナセさん、これが“ドミノ倒し”の醍醐味だいごみですよ」




















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