第四章 ???の記録

 中途半端な存在だった。

 自分がそういう存在だと気がついたのは、いつ頃からだっただろう?

 でも気づこうが気づかなかろうが、自分は生まれた時から中途半端な存在だった。

 そうしたのは、自分の親だろうか? わからない。わかったとしても、何処にいるかもわからない親に、この疑問を尋ねることは出来ない。

 自分は人間だった。だから脳があった。心臓があった。そして、自分の体は体現者だった。

 自分の体は体現者だ。だからきっと、自分は科学傾倒者なのだろう。体現者の中に、脳と心臓が詰め込まれていたとしても。

 中途半端な存在だった。

 完全に肉体から意志を切り離した科学傾倒者でもなく、肉体を拡張させれる魔術傾倒者でもない。

 そもそも、この体に詰まっている臓物(脳と心臓)は自分のものなのだろうか?

 本当の自分は他の科学傾倒者と変わらず、揺り籠の中から臓物が詰まった不思議な体現者を操作してるだけなんじゃないだろうか?

 しかし検査の結果、自分の体現者の中に詰め込まれている臓物は、生きているらしい。

 この脳は、心臓は、自分のものなのだろうか?

 それとも全く別人のもので、懊悩している今の自分を、体の中で笑っているのだろうか?

 出来ることなら、切り離してしまいたい。誰のものともしれない、この肉を。

 でも、そんなこと出来るわけがない。これがもし自分の肉だとしたら、自分の身を引きちぎることなんて、自分の体から脳と心臓を抉りだすことなんて、耐えられない。

 なら、自分のとり得る選択肢は一つしかない。

 この身に収まる脳と心臓を自分のものであると思い込み、吐き気を催すこの重荷を大切に抱えながら、生きていく。

 しかし、この生き方には問題がある。体現者に脳と心臓を入れ、その肉を生かし続けるなんて、一体どれだけ金がかかるのだろうか?

 だが、やるしかない。どれだけ金がかかろうとも、その金を稼がなければ、体の中にある自分のものかもしれない脳と心臓が、停止する。

 やらなければならない。

 稼がなければならない。

 生きなければならない。

 でも、意志の在り方が重要なこの時代に。

 こんなあやふやな生き方をして。

 こんなあやふやな在り方の自分は。

 果たして本当に、人間なんだと言えるのだろうか?

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