第三章 イブの記憶
「だ、大丈夫ですか? グロッケンさん!」
傷だらけになった彼を見つけて、私は大慌てで駆け寄った。
「何、多少撃たれただけだ。死にはしないさ」
「それでも心配します! そ、それで、あの、リリスさんは?」
「リリス? ああ、ポンコツのことか。あいつなら帰ったよ。一旦な」
「一旦、ってことは、また来るんでしょうか?」
「……ああ、来るだろうな。必ず」
深刻な顔をして、グロッケンさんは黙り込んだ。私は沈黙に耐え切れず、話題を変えることにした。
「そ、そういえば、グロッケンさんは何でこちらにいらしたんですか?」
「ん? ああ、こいつが出来たから、お前に見せてやろうと思ってな」
「え、私にですかっ!」
グロッケンさんが私のために何かしてくれたということが嬉しくて、私は満面の笑みを浮かべ、一瞬にして苦渋に満ちた表情に変わった。
彼がジャケットから取り出したのは、一枚の紙。
「……今度は、誰の似顔絵ですか?」
「お前のだ」
「絶っ対に私には見せないでくださいっ!」
「そんな大げさな」
「これでも足りないぐらいですっ! あぁBMIでびしょびしょになってるし、あ、広げないでください!」
似顔絵が視界に入るのすら全力で拒絶する私を見て、流石のグロッケンさんも苦笑いを浮かべた。そしてそれはすぐに、何かを思い出したような表情に変わる。
「どうしたんですか? グロッケンさん」
「……ポンコツに似顔絵渡すの、忘れてた」
それを聞いて、私は盛大にため息を付いた。
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