第2話‐2‐
「もういいでしょう、それ以上はやりすぎです」
「が、学園長…、なぜこちらに…」
突如として現れた女性を黒衣の男は学園長と呼び、何やら恐れているようだ。それほどの権力の持ち主ならあるいは…、俺は一か八か学園長に向かって話しかける。
「あんた学園長なんだな。だったら話がしたいんだけど」
「えぇ、いいですよ。こちらもお話しておきたいことがありますから」
拍子抜けするほどあっさりと交渉が成立してしまう。逆に裏がありそうで怖いな。
「心配せずとも裏などありません」
俺の警戒を察したのか、敵意がないことを伝えられた。
「そちらの少女と共に私の後を付いてきてください」
そう言うと学園長は歩き始める。後を追うために少女に声をかけるが、疲れて眠ってしまったのか、反応がない。俺はため息をつき、仕方がないので少女をおぶって学園長についてゆく。
にしてもこいつ軽いな。ちゃんと飯食ってるのか心配だ。
―数十分後―
「なぁ、あんた。一体いつまで歩かせるつもりなんだよ」
歩き始めてから随分と時間がたっている、ここが校舎の中だということは分かるが、この廊下をどこまで歩かせるつもりなんだ。窓の外を見ても、景色が変わっていないように見えるのは気のせいではないのであろう。
「このくらいでへばったのですか?もう少しの辛抱なので、我慢してください」
何かムッとする言い方をされる。だが確かにこれしきでへばってるようじゃいけないとは思うけど、ここまでほぼ休みなしで来てるんだから体も限界なんだろう。
実際、おぶっている少女と戦いもいつもの半分以下で戦っていたしな。
「失礼、あなたはここまで休みなしで来て頂いていたのですね」
「…なんで分かったんだ?」
「今しがた連絡を受けまして…、今日はご説明が終わり次第お休み頂きましょうか」
「…正直そうしてもらえると助かるかな」
「畏まりました」
そんな話をしている中で、学園長が歩みを止める。どうやら目的地に着いたようだ。学園長が目の前の扉に手をかざすと、戸がゆっくりと開く。人が一人ほど入れるくらいに開いたところで、学園長が入ってゆき、それに続いて俺は入っていく。
中に入ると照明がつく。部屋は高さが二階分、幅は教室二つ分と言った所か。学園長一人の部屋と考えると広いのではないかと感じるな。
「どうぞお好きな席に」
そう促す学園長はすでに自分の定位置であろう席に座っている。俺は適当な席に少女を降ろし、その隣に座る。
「軽くこれからの事をお話ししましょうか。あなたがここに呼ばれた理由ですが…」
「両親を探すために来ただけだ」
「そうでしたね、これについては後で詳しくご説明いたします。次に彼女の処分ついてですが、あなたと共に同じクラスに編成させて頂きます。もちろん面倒はあなたに見てもらいます。それと先ほど話していた極秘で行われていた非道な研究はすでに取り止めてもらっています」
正直そこまでしてくれるとは思わなかったな、言われなくてもこっちから提案するつもりであったけど。
「…まぁそれでいいよ、俺が言い出した事だしな。むしろ寛大な処置に感謝したいくらいだぜ」
「それからあなた達の住居についてですが、場所もなく、二人きりにするわけにもいかないので、私と同居して頂きます」
「俺は二人きりになるよか、マシだけど、あんたはそれでいいのか?」
「私も構いません。それに同室のほうが相談もしやすいでしょう」
納得した俺は頷いて返事を返す。
「さて、今話すべきは以上でしょうか」
「ん?両親を探す話はしないのか?」
「私と相部屋と言いましたよね?」
「そこで話すと」
「えぇ、では参りましょうか」
そう言うと学園長は席を立ち、壁に向かって手をかざすと、扉が出現する。
学園長が扉を開けて入っていく。俺もついていこうと、未だに起きていない少女のほうを向く。すると少女は起きていた。
「…」
「いつから起きていた?」
「……おぶっている時に…」
「…ほぅ」
俺は少女のおでこにデコピンをする。
「いたっ!なにすんだ!」
「起きてるなら起きてるって言え。デコピンはその罰だ」
俺は椅子から立ち、部屋に向かう。少女もその後を付いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます