(5)
そして帰宅。
実は明日の作戦には、姉の力も借りようと思っていた。明日の決戦の場は一般公開で、OBOGは勿論それ以外の人も見に来られる場所であるため、皐月と深い繋がりのある姉に是非とも作戦に参加してもらいたかった。既にお願いはしてあり、詳しいやり方は姉が考えてくれていた。
「ただいま」
言いながら、靴を脱ぐ。
振り返ると、姉の桜が立っていた。
裸エプロンで。
再チャレンジというやつでしょうか。
しかも何だか頬を赤らめていて吐息が荒く、俺を見つめる視線がねっとりとしている。
あ、うん、これは……。
イエス。
貞操の危機!
「すみません、帰る家を間違えました。失礼しまぐえっ」
襟を掴まれて家に引っ張り込まれ、後ろから抱きしめられる。いつもより衣服が少ない分柔らかすぎてまずい!
「匠、お帰りなさい。抱く?」
「ど直球すぎるな!?」
ご飯にする? お風呂にする? それとも~のくだりを究極的に略したようなフレーズだった。これはラブラブの新婚さんなら「うん、抱く!」とか言って飛びかかりそうだ。
姉は俺のツッコミを聞くと、「あん……深く刺さる……っ」と意味深なことを言って身体を離した。ツッコミに対してだよね? あんまり聞かない表現だけど、それはツッコミに対しての感想だよね?
「と、取り敢えず着替えてご飯食べるよ」
「ん、わかった。じゃあ挟むわね」
「何を!? 何で!?」
対象と手段が気になる台詞だった。
リビングに戻ろうとして、姉がくるりと後ろを向く。
「ぶほぁっ!?」
むちむちの身体つきと白い肌を惜しげもなく晒すその後ろ姿に、思わず吹き出す。落ち着け落ち着け、尻の形超綺麗だな……違う違う、まずは押し倒して……違う違う、何言ってんだ俺は。まずご飯を食べて、歯磨きして、風呂入って、身体を綺麗にしたところで押し倒して……あれ? ルートが決定してる?
混乱している内に、ふと視線をやると姉がいない。移動が速いな……と思っていると、すぐ下に姉がいることに気付いた。
膝を付いて、俺の股間をじっと見つめている。
あ、いけない。
思いっきり起立してた。
「匠……こんなに逞しくなって……」
姉の細い指がチャックに伸びてきたところで、慌てて肩を掴んで立たせる。
「あんっ! んんん……っ、こ、こらぁっ、乱暴にしちゃだめだぞぉ……っ」
「あ、ご、ごめん……」
「でも、そういうプレイの一環なら許しちゃうかも……」
「着替えまーす」
「ああん!」
何だこれ、何の痴女キャラだよと思いながら。
ぱっぱと着替えて、ご飯を食べた。
ご飯を食べて、歯磨きをして、風呂にも入った。ちなみに姉と混浴などというエロ漫画のようなイベントは発生していない。発生するとしたら次のシリーズの時になるか……って何の話をしてんだ俺は。
リビングのソファでテレビを見ながらだらけていると、
「匠、隣良い?」
と、姉の声がした。
「ああ、いいけど……っ」
言葉が続かなくなった。
姉は薄手の白のタンクトップにホットパンツという、健康的な肉体美をこれでもかというくらいに晒す格好をしていた。よく見るとタンクトップからはうっすらと突起が透けて見えていて、ホットパンツも上のボタンを外していてチャックがいくらか開いている。
「な、何だよその格好……っ」
「あはは、匠が興奮するかなと思って」
姉がそんなことを言いながら、俺の隣に腰を下ろす。ソファがぎしりと音を立てた次の瞬間、俺にぴたりと身体を寄せた。二の腕の柔らかさに陶酔しながら、必死で視線のやり場を探す。
「今日は本当にどうしたんだよ?」
聞くと、姉が俺にしな垂れかかってきた。体重の軽さに驚きつつ、風呂上りの柔らかで甘い香りが鼻腔を擽り、益々理性が弾け飛びそうになる。
「……うん。明日、でしょ? 匠が言ってた作戦って」
「ああ、わりぃな、姉ちゃん。ぶっつけになっちまって」
「ううん、良いの良いの。練習しようもないしね。……それに、わたしも皐月に会いたいし」
「……っ」
姉の言葉に胸が詰まった。
「それでね、わたしはまだ良いんだけど、きっと匠は先陣切って頑張ろうとしてる分、緊張してるかなって思って」
「……そ、それは……」
言われて初めて気付く。
確かに俺は、緊張しているのかもしれない。
最近ずっと肩に力が入っているような気はしていた。
「だから、少しでも匠の緊張をほぐしたくて……」
「……ほぐしたくて?」
「……抜いてあげようかなって」
わお。
「寝ます」
「一緒に?」
「添い寝したって俺は耐えるぞ。俺の意思の硬さを舐めるなよ」
「硬さ……舐める……」
「お前は男子小学生か!?」
「わたし、柔らかいよ?」
「うん、それは知ってる」
「もっと柔らかい部分があるよ?」
「え、どこどこ?」
「えっとね……」
姉が立ち上がり、俺の目の前でホットパンツのチャックに手を掛ける。
「あ、それ、本当に理性飛ぶからやめて」
「ちぇーっ」
姉が口を尖らせて、そのまましゃがみこんだ。
……俺が座っている、その足の間に。
「なんで!?」
俺のツッコミをガン無視して、姉が俺の股間に顔を寄せる。しまった、最近暑くなってきた上に風呂上りだから、すーすーするかなと思ってパンツを履いてなかった。薄手の半ズボンのために露出している太ももを姉がねっとりと撫でてきて、がちがちに膨らんだ股間に顔を押し付けてきた。
「んふぁぁぁ……すごい、匂い、濃いよぉ……っ」
「うおわぁぁぁっ!?」
慌てて姉の頭を押さえて剥がそうとしても、中々離すことが出来ない。
「うぐぐ……それなら、これはどうだ!?」
逆に動きを止めようと、姉の頭を足でがっちりと蟹挟みにした。
「んふぅぅぅ……? あっ、んふぅぁぁぁ……っ」
「……っ」
息苦しさも相俟ってから、姉は顔を紅潮させてうっとりと表情を蕩けさせている。
いかん、逆効果だ。
「ちょ、ちょっと、姉ちゃん! ほんとに、ほんとに……っ!」
「あむっ」
「うおぉっ!?」
裏側を、薄手のズボン越しに艶やかな唇で挟まれた。
そこからしばらく、理性がほぼ爆発しかかっている状態でひたすら抵抗して、何とか逃れることが出来た。
姉は口を尖らせて諦めてくれたが、俺はズボンを替えざるを得なかった。貞操も失ってなければ抜かれてもいないけれど、ズボンの外側も内側もひどいことになっていた。
それでも姉の気遣いは嬉しくて。このばかなやりとりで何だかんだでかなり緊張が解れた。
『それなら良かった。おやすみ。あ、部屋の鍵開けておくから。わたしが寝てても気にしないでいいよ』
などと言われたけど、ちょっと何を言ってるか分からなかった。夜這いを誘っているだなんて全く思わない。
尋常で無い程興奮する状況を1日で2回も味わった所で、寝床に就く。
明日、全てが決まる。
皆で笑って、泣いて喜べるように。
頑張るんだ。
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