第3章 繋がり合う点と点

(1)

 姉と話した翌日。

 学校にぼんやりと向かいながら、昨日の姉との会話を思い出していた。


 正直、今でも信じられない。

 だって、姉の元クラスメイトで、死んだはずの彼女が……なんで、自分のクラスに居る――?

 どうして、死んでいる筈の彼女が、あんなにも生き生きとした様子で、俺たちと接してくれている――?


 姉から聞いた話ではまだ不十分だった。とにかく、情報が足りない。

 しかし姉の精神状態も、きっとまだ良くないだろう。あまり問い詰めるようなことはしたくない。


『わたしの髪、元は伸ばしてたでしょ? あれね、皐月とお揃いだーって言って、ペアルックみたいな感じにしてたの。子供っぽいかもしれないけど、とっても楽しかった。でも、あんなことがあってから……髪型を変えて気持ちを無理やりにでも切り替えて、前に進まなきゃって思ったんだ』


 そう言って悲し気に笑い、指でくるくると髪を巻き付ける姉の表情が忘れられない。


 うんうんと悩みながら、気が付けば学校へ到着していた。

 姉の話では、皐月が住んでいた家はうちから結構近いらしい。

――もしかしたら、早めに家を出たら学校の外で彼女に会えるのではないか――?

 そんな淡い期待を抱きながら学校へ来たが、どうやら徒労に終わったようだ。


 第一、会えたら、もし本当に逢えてしまったら。

 彼女の存在が、尚更よく分からなくなってしまう。


 まずは、様子を見よう。そうすることしか出来ない。

 校舎を見上げながら、重い足取りで駐輪場に向かった。

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