第39話 お……俺!?
彼女が『タイム ア ルーラ』であること自体気にはなるが、元々探していたのは探知系能力者だ。
「あの、マンドラゴラの在り処を教えて欲しいんですが」
「あー、そんなのお安い御用よ」
そう言ってセリーナさんは大きな水晶玉を持ってきた。
「……これは?」
「私の頭の中の映像をここに映し出してくれるのぉ。便利でしょぅ?」
水晶玉は一般的に遠距離での通信に用いられている。しかし、それは魔力を用いてその場の映像を映すのみで頭の中の映像を映すなんて聞いた事もない。
しかしそもそも、彼女は魔力がないのだ。水晶玉が映し出すことなどできないはずだ。
「……一度やってみて貰えますか?」
魔力がないことを、俺が実際に確認している。
それ以外の力が働いていると言うことだろうか。
「いいわよぉ、じゃあお二人さんは出て行ってくれる?」
セリーナさんは妖絶な微笑みを浮かべながら首を傾ける。
「なんですか?」
「たまになんだけど、
そう言ってセリーナさんはオータムとラーマさんの方を見た。
「私は全然構いませんよ?」
オータムが事もなげに答える。
「俺は構うわい! いいから出てってくれよ。後で教えるからさ」
例え断片的でも、自分の未来なんて絶対に見られたくない。自分でも十年後、二十年後の未来なんて見たくもないのに。
「えー、ジーク先生の未来、みてみたかったなぁ」
ラーマさん……ぜひ今度一緒に見ましょう。
とにかく、強引に二人を退出させ水晶玉を置いた机の前に座った。
「じゃあ、お願いします」
そう深々とお辞儀をした。
「わかりました……はぁーー! ホンニャラハンナラシバヒチラレスク……サラサラボンボン……」
セリーナさんはそう叫びながら水晶玉を撫で始めた。
全然聞いたことがない言葉の羅列だ。
「随分変わった魔法ですね」
「まあ、演技なんだけどねぇ。私、魔法使えないから雰囲気づくりとして」
……この人は本当に『タイム ア ルーラ』なんだろうか。
その時、水晶玉に映像が映し出された。
「ハゲた……男ですか。後姿だけしか見えないけど……あっ、ふり向い――」
……オ、オレジャナイカ。
「――なーんちゃって」
うおおおおおおおおおおおおい!
ごまかせるか――――!
「セ、セリーナさん! どーなってるんですかどーなってるんですかどーなってるんですかぁ!」
なんで俺、ハゲてるんですか!? ハゲてるんですか! ハゲるんですか俺は!
「ええっと……あっ、直った直った。ええっとここはどこかな……あっ、あったよマンドラゴラ」
知るか―! マンドラゴラなんてすでにどーだっていいわ!
「セリーナさん! ごまかさず教えてください! あの映像は何年後の俺なんですか!?」
「え、ええっと……そんなのわかんないわよぉ。意図的に映した訳じゃないし」
な、なんて無責任な人なんだ。
急いで先ほどの映像を脳内フラッシュバックする――見た目は結構若かったような。
「……何年後なんですかもう一回占って教えてください!」
「ええっと……よし、わかったよぉ。じゃあ、言うわね」
「うわああああああっ! 俺が聞きますから! それまで答えないで下さいよ」
ズバリ言い当てられてもショックがでかすぎる。せめて、何年以内とかの聞き方がいい。
「わ、わかったわよぉ。そんなに必死にならないでも……」
こんだけのことしておいて……どんだけ他人事だよあんた!
「……一〇年以内?」
三〇歳後なら許す。俺の人生プランでは二五歳で結婚。人生を伴侶とともに過ごして五年過ごして二人の子供に恵まれてそう言うのも気にならないぐらい愛情を育めば……ハゲなんて愛情で……
コクン
いーーーーやーーーーー頷いた―――――!
若すぎるよー! 1番楽しい時じゃーーん! 若すぎるよー!
「うわあーーーーーーーーーーーーーー」
「そ、そんなに真剣に泣かないでよぉ……ひくわぁ」
コ、コノオンナ……
「あんた……人の髪の毛をなんだと思ってるんですか!?」
「おっ落ち着きなさい。ハゲくらいで……そんなこと気にする女なんてロクなもんじゃありませんよ」
そう言ってセリーナさんは女神のような笑顔を浮かべる。
「……じゃあ、セリーナさんはハゲでも構わず愛せるんですか?」
「……」
沈黙するな―! 目を逸らすなー!
「そ、そんなにいきり立たないでよ……わ、わかりました! 嘘だから、冗談。これでいいでしょぉ?」
えっ!?
「……ほ、本当ですか!? 本当に嘘なんですか?」
「いえ。ハゲるわよぉ」
「――うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
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