第38話 彼女の能力
診察した結果、セリーナさんが特異体質であることがわかった。
彼女は魔力が全くない体質だ。
でも……だからと言って……
「セリーナさん、俺はまだあなたが『タイム ア ルーラ』だとは認めてませんけど」
「あらぁ。じゃあ、揉まれ損ね」
彼女が、豊満な胸を両腕で抑えながら笑う。
「からかわないで下さい。あなたが特異体質だってことはわかりました。ですが、それはあなたの能力の証明にはなっていない」
いや、と言うより彼女がそうでない事を望んでいる。
「フフ……じゃあ、私がこれから起こる未来を当ててあげましょうか?」
艶美な声でセリーナさんが答える。
「……面白い。当ててみてください」
お手並み拝見と行こうじゃないか。
「あなたは、10分も経たずに私にこう言うわ『セリーナさん、あなたの能力は本物です』って」
「……はっ」
そう言われた途端、思わず笑ってしまった。
そんな未来ありうるわけがない。
「バカにしてるんですか? そんな事言われて、俺が言うと思いますか?」
「あらっ、未来は絶対なのよ?」
「面白い……やってみて貰いましょうか。断っておきますが、俺に何をしたって構いませんよ。もちろん、俺があなたに危害を加えることはありませんし、ここから動くことはありません」
魔力がないのだ。操られることも傷つけられることもあり得ない。
そんな中、どうやって俺にその言葉を言わそうと言うのか。
「じゃあ、女性陣には少し下がってもらいましょうか」
セリーナさんはそう言って、オータム、サリー、ラーマさんを後ろへ下がらせた。
彼女はそのまま俺の近くに寄る。
普段からオータムに殴ったり蹴ったりされているのだ。
どんな苦痛を受けたところで……
「あ、あの……何を……」
「えっ? ボディタッチ……」
そう艶やかにセリーナさんが微笑みながら、その細い指先で俺の身体を艶めかしくつたって行く。
・・・
……これは……いかん……マズイ……
「あの、セリーナさん。いったい何をやってるんですか?」
そう言いながらオータムが近づく足音がした。
「来るな!」
反射的に大声を出した。
「ジ、ジーク先生?」
戸惑うオータムに掌を向けた。
「誰も……来るな……来たら……死ぬ」
神妙な声で制止した。
「……はい、わかりました」
頷くオータム。
俺の額から一粒の汗が滴り落ちる。
今……俺のアレが……エライ事になっている。
そりゃ、綺麗な女性にあんな手つきで触られたら健全な青年だったら誰でもこうなるに決まっている! 決まっているのだっ!
だが、不幸な事に……あいつら(女性陣)は確実に、話して通じる相手ではない。
「絶対に来るな……絶対にこっちに来るんじゃないぞ」
極力冷静に振舞いながら女性陣に微笑みながら答える。
今、こっちに来てしまったら……ひゃああああっ!
それだけは絶対に避けなければならない。
「俺なら大丈夫だから! なっ、全然問題ないから」
「そんな! 一人で抱え込まないで下さい。私にも心配させてくださいよ! いったい何が起こってるんですか!」
オータムがこっちに向かって叫ぶ。
いかーん! 気持ちは凄く嬉しいんだけど考えられない事起こってまーす!
こ、このままでは捕まる通り越して半殺しになってしまう。
「じゃあ、女性陣はゆーっくり、一歩ずつ近づいて来てねぇ」
何―――――!? セリーナさん! あんた悪魔か! 悪魔の化身か!
「来るんじゃねェ――――! 罠だ! これは、罠だぁ!」
そう言って必死に三人を制止する。
「いいえ! 罠だとわかっていてもジーク先生が……これ以上苦しむところは見てられません!」
ラーマさーん! そんな事よりこっち見んでー。こっち見んといて―。
このままでは……犯罪者になってしまう
「セリーナさん……卑怯すぎますよこんなの。俺の大事な……人質にするなんて」
彼女は満面の笑みでボディタッチを続ける。
「あらっ、私はルール違反は犯してなくてよ? じゃあ、みなさん。少しずつこっち来てくださいねぇ」
「ジーク先生……心配しなくても大丈夫です。私たちは大丈夫ですからっ」
心配なのは別のモノで大丈夫じゃないのは今後の俺の未来ですー!
無情にも……ゆっくりゆっくり近づいてくる女性陣……
いかん……このままでは……犯罪者に……もはや……限界
「セリーナさん、あなたの能力は本物です」
「……はい、よくできました」
セリーナさんは天使のような微笑みを浮かべて俺の肩に手を置いた。
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