第33話 再会
翌朝、サリーが先導し宿を出発した。中心のリサリック通りを南に向かい、一軒の修道院に到着した。王都ベッセルバルムの建物のほとんどが煉瓦を基調とした橙の色に統一されているが、この修道院は相当古い建築物だからなのか色褪せた青色だった。
「ここにいるのか、サリー?」
探し物を導いてくれる女性。恐らく、探知系の魔法なのだろうが100%なんてにわかには信じられない話だ。
探知系の魔法者は大陸にも数人しか存在しない超稀少能力者だ。各国、こぞって能力者の確保に全力を注ぎ、例外なく国に保護されている。それは、アナン公国ですら例外ではない。なぜなら、探知系の魔法者はアナン公国史上最強の魔道士であるテーゼ女王すら脅かす力を秘めているからだ。
それが……こんな寂びれた修道院にいるのか。
「まあ、入ってみればわかりますよ。クゥフフフフ」
その不気味な笑顔が気になるが、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
サリーの情報収集能力に任せよう。
「ごきげんよう、リアルイン修道院へ……ジーク先生……ですか?」
くっきりとした二重に大きな目は彼女のライトグリーンに輝く瞳を絶妙に包み込む。そして、少し丸みを帯びた形の良い輪郭が、彼女の微笑みをより一層魅力的に映えさせていた。うっすらと焼かれた褐色の肌は彼女の魅力的な顔立ちをより一層引き立たせていた。
そこにいたのは……紛れもなく、ラーマさんだった。
「なんで……あなたが……」
「お久しぶりです、ジーク先生、オータムさん、サリーさん。ここで、今研修を受けてまして」
天使のような微笑みを浮かべるラーマさん。
可愛い……可愛すぎるっ!
「……どうもっ、お久しぶりです。ラーマさん。サリー、どーゆーことかなぁ」
オータムが満面の笑みを浮かべてサリーに尋ねる。
……なんだろう、同じ笑顔なのに……大陸一怖い。
「あ……あの、エへへへへへ。ほらっ、修道女の事は修道女に聞けってことで……他に知り合いの修道女も知りませんし。そんなに怒らないでくださいよ」
「あらぁ……私がいつ怒ったの? いつ? 何時? 何分? 何秒? 大陸の月が何回満ちた時?」
天使のような微笑みを浮かべるオータム。
「え、ええっと……あっ、ちょっと私予定が――」
そう言って逃げようとするサリーの首の裾を掴んで引き止めるオータム。
「ないでしょ? ねえ、私がいつ怒ったの? いつ? 何時? 何分? 何秒? 大陸の月が何回満ちた時?」
怖いよー! 怖すぎるよー、オータムさーん。
「オータムさん……あの……何か気に障ったことがありましたか?」
オズオズとラーマさんが尋ねる。
「……いえ。なーんにも」
「そうですか……あーっ、よかった。フフフ……」
「フフフフフ……」
両方とも天使のような笑顔だったが、一方の天使は超怖い天使だった。
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