第32話 どっちがベッド?


 一旦、情報収集に言ってもらっているサリーと待ち合わせをするべく宿泊している宿に到着した。

 祭りが重なっていたので、宿泊が可能だったのは、俺とオータムとサリーで一部屋。

 なんだろう……女子二人と一緒の部屋だっていうのに、全然心躍らないのは。

 彼女たちに指一本でも触れれば、瞬間にして俺の腕は斬りおとされるだろう。


 ベッドは一つ……当然二人は床になる。


「もちろん、医療魔術師である俺がベッドだよな?」


「もちろん、レディ・ファーストで私かサリーですよね」


「……ははははは」


「……フフフフフ」


「助手の本業はなんだ? 医療魔術師の補佐だろう? わきまえたまえよ。助手のオータム=アーセルダムさん」


「そうです、私は助手で医療魔術師の補佐が仕事です。医療魔術師免許落ちたんですよね? そもそも、今はあなた医療魔術師なんですか、ジーク=フリードさん」


 ……この野郎。


「……わはははは」


「……フフフフフ」


「誰が金払ったと思ってんだ? この宿代は誰が――」


「完全三等分でしょ? 甲斐性なしさん」


 そ……そうだっけ。


「……わはははは」


「……フフフフフ」


「早いもの勝ち――「先、とーった!」


 そう言ってオータムがダイブした。

 き、貴様……


「卑怯者! 卑怯者にはこのベッドは渡さん!」


 そう言い放ち負けじとダイブ。

 と同時にオータムを足で追い出そうとする。


「卑怯者はどっちよ! 今、早い者勝ちって言おうとしたよね!? 先生の行動なんてお見通してそれを読み取って先んじたのは私でしょ! 素直に負けを認めなさいよこの敗北者」


 容赦なくみぞおちに蹴りを入れてくるオータムの足を必死に抑えながらベッドから振り落とされるのを必死に抑える。


「まだだ……まだ終わらんよ! 貴様にそもそもレディ・ファーストなど必要ない」


「こんの……か弱いレディに向かってなんて台詞を……この変態男! 足離しなさいよ、ベッドからどきなさいよー」


 足をバタバタさせて、俺の手から離れて顔に腹に首に―――痛痛痛痛っつーの!?


「貴様がいつ何時何分か弱いレディだったのか説明してみろー! と言うかか弱いレディは男を足蹴にしまくらねーんだよ!」


                         ・・・


「ただいま帰り――……あの……襲撃に遭ったんですか?」


 サリーが、ボコボコの俺と半壊のベッド、グチャグチャの部屋を見ながら呟いた。




 

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