第30話 どちらが悪い!?
マギ先生が大量の魔草が入った袋を抱えながら会議室に入ってきた。
「先生、お久しぶりです」
オータムが嬉しそうにマギ先生の手を握る。
「ほっほっほっ、相変わらずスベスベで可愛い手じゃのう」
……エロじじい。
「ひじょ――――に、不本意ですが! あんたの力が必要になりましたよ」
「サリーちゃんもどんどん可愛くなって。こんなに可愛い子たちがいるんだったら時々覗けばよかったのぉ」
む、無視すんなよジジイ。
「マギ先生、お久しぶりです。実は兄が医療魔術師免許を剥奪されそうで。先生にお力添えを頂きたいんです」
「おお、ロス。お前は相変わらずダメ兄貴を持って苦労しとるのぉ」
「……ははっ」
ロ、ロス! 否定しろよ!
「もちろん、それ相応の金は支払いますよ。いくらですか?」
「ほっほっ、ジークは相変わらずだのぉ。自身の失態を邪悪なやり方で何とかしようとする根性」
「……わはははっ! 師匠の教えがいいからですかねーっ」
『目的のためなら手段を選ぶな』、それがマギ先生に教えられた唯一のことだ。
星英草を守っているオーガの餌として使われた時も、俺にあんたはそう言った。
「ちょっとジーク先生! マギ先生がそんなこと教えるわけないでしょ。人のせいにしないでください」
「ちょ、ちょっと待てオータム。お前はこの人の本性知らないから――」
「そうですよ、ジーク先生。ジーク先生の性格がアレなのはみんな知ってますから。今更、師匠のせいにするとか往生際が悪いですよ」
サリー……君だけには性格悪いって言われたくない。
「オータム、サリーちゃん。いいんじゃ。わしの育て方が悪かったんじゃ。わしがこいつを甘やかせて育てたばかりに……」
そう言いながらこれみよがしにシュンとするマギ先生。
いつどこで何時何分甘やかして育ててくれたか全く記憶がないのは決して気のせいではない。
「……ジーク先生、最低です」
……ふぁっ!?
「師匠であるマギ先生にこんな風に頭を下げさせて知らん顔ですか? それでも弟子ですか! 人間ですか!?」
や、やばい……何やら凄い悪い人間にさせられている。
「いいんじゃ、オータム。悪いのは全部わしなんじゃから……」
ジジィ……謀りやがったな。
「マギ先生に謝りなさいよ!」「そうだそうだ!」「ろくでなし!」「甲斐性なし」「アホー! アホアホアホアホー!」
全員から浴びる容赦ないバッシング。
こんの……邪悪じじいがぁ。
「マギ先生。さっさと本題済ませましょう。いくらですか?」
このジジイに謝るなんざ死んでもごめんだ。
「ふん……つまらんのう。金なんて要らん。欲しいのはマンドラゴラじゃ」
やっぱこのジジイに頼み事なんてするんじゃなかった。
マンドラゴラは人のように動き引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は発狂して死んでしまうという伝説的な魔草だ。
その危険性と希少性から市場に出回ることはほとんどなく、ここ数年は販売しているという話を聞いたことがない。
「相変わらず吹っ掛けますね」
「ほぉっほぉ。お前が困っとるんじゃ。わしの愛情じゃよ」
どんなゆがんだ愛情だよ、そうため息をつきながらも
結局、マンドラゴラを探すという選択肢以外にはなかった。
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