第47話 結局、俺は、どうしたいのだろう
<ジーク=フリード>
結局、オータムを連れて帰ることができないまま、診療所に到着した。その間、自分の中でグルグルグルグル気持ちが回っていた。
俺は、あいつをどうしたいのだろう。
帰ってきても、サリーとアリエには言い出せなかった。ヘタしたらストライキが起きるし、まだどこかでオータムが戻ってきてくれる……そう思っていた。
・・・
そんな儚い想いを裏切るように、1ヶ月経ってもオータムは戻ってこなかった。いつも通りの治療……オータムがいなくて休みも取れないが、何とかギリギリ間に合っているという現状。あいつがいなくても何とか仕事ができているという事実に、言いようのない寂しさを覚えた。
しばらく、そんな日々が続いていた時、ロスが神妙な面持ちで声を掛けてきた。
「兄さん、ちょっと来てくれないか?」
言いたいことは、わかっていた。
「いや、ちょっと今は治療で――」
「オータムは、兄さんの気持ちが知りたいんじゃないか? 兄さんは、結局、どうしたいの?」
ロスは怒るわけでもなく、諭すように俺に問う。
問われて、ますます、わからなくなった。結局、俺はどうしたいんだろう。オータムがいなくて、ポッカリと開いた穴がいつまでも塞がらない。でも、それをあいつに言えば、あいつは受け入れてくれるのだろうか。いや、あの時は受け入れてくれたのかもしれない。でも、今は違うんじゃないか? クビと無残に言い放った俺に愛想を尽かして、もうあの場所にはいないんじゃないのか。
答えが出ぬまま、さらに日にちは経過した。
そして結局、俺はオータムを迎えに行ってない。その決断をしなかった。
いや、そんな風に言えば聞こえはいい。少なくとも、俺は要するに、今まで培ってきた関係を捨てられなかったんだ。俺は、迎えに行けたはずだった。そして、オータムへの想いに嘘はなかった。
でも、俺はあいつを突き放した。だが、俺は迎えに行かなかった。答えを知るのが怖くて。今の関係を壊すのが、無性に恐ろしくて。
でも、だから、でも、だが……そんな事を頭の中で繰り返しているうちに、それ以上、身動きが取れなくなっていた。
気がつけば、オータムが去ってからすでに2か月が経過していた。
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