第18話 オータムさんの憂鬱②


 ロスが診療所に帰ってきて1週間が経った。緊急時以外はロスとジーク先生が12時間ずつ交代勤務で当たることにした。ジーク先生はこの破格の待遇に涙がでるほど感動していた。逆に効率が上がったことで助手の私たちがついて行けなくなってきた……くっそぉ。悔しいけど見事だ。

 ――げっ、助手のアリエの目がすでにハートだ。


「さすがはロス先生ですね。ジーク先生と仕事を半分に分けられる人なんて本当に信じられないです」


ちょっと、私と話す時より声高くない?

 

「いや、俺ぐらいの魔術医師は世界中にはごろごろいるよ」


 こいつ……ムカつく。


「意味のわかんない謙遜しないで。あなたほどの医師がごろごろいたら世界中に死者は1人もいないわよ」


 嫌味を言ったつもりだがロスはケロッとしてる。そういえば、こういう皮肉が通じない奴なのよねー。


「ありがとう、オータム……でも、今なら僕と兄さんなら、どっちが魔術医師として上なんだろうね?」


「……どっちが上なら満足なのよ?」


 駄目だ。どうしても棘のある言葉を吐いてしまうのは、まだ許していないのだろうか。会話すればするほど険悪になってしまう。その雰囲気を察したのか、再びアリエが会話に割って入ってきた。


「ロス先生はこの診療所を出て何をしていたんですか?」


「ああ、14才の時にここを出て、聖都パレスの医療魔術研究所で働いてたんだよ」


「えっ! 医療魔術の最高施設じゃないですか! すごいすごい! オータムさんはこのこと知ってたんですか?」


 仕方なく頷いた。しょうがないでしょ。嫌でも目に入って来るのよ。どこの医療魔術の雑誌にも載ってるから。


「なんで教えてくれなかったんですか?」


 色々あるのよ。色々と。


「まあまあ……いいじゃない」


 おっ、ナイスだサリー。この件に関してはこれ以上突っ込まれたくない。


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