第4話
2029年12月23日。もうまもなくクリスマスイヴが訪れるという頃合い。廃墟の中にただ1棟だけ綺麗に整備されたビルがそびえ立つ。
威圧的と言っていいほどの高さと大きさを見せつけるかのようにそびえ立つそのビルの一室の窓から光が漏れていた。
部屋は体育館ほどの大きさがあり、その中には多くの機器類が設置してあった。どうやら研究室のようだが、その規模は大学の研究室等とは比べ物にならない、明らかに普通ではないものであった。
そしてその広さのに対して中に居るのは男性が3名、女性が2名の計5名ほどの研究者達だけであった。その内の男性2名が何やら作業をしながら話し合っていた。
「抹殺投票なんて、こんなシステムやっぱりどうかしてる。こんなの止めるべきだ。そとそも彼らが受け入れるかどうかも怪しい、分かってるだろうが彼らも人間なんだぞ。きっとやり損さ。」
「いやそうじゃないだろう。このシステムで彼らの生死観を捉えられるんだ。一番重要な事だろ。たとえ極端な方法だとしても、そういった究極の例外にどう対応するか観ておきたい。」
二人の男性が話し合う中、女性職員の内の一人は彼女の操作する大型端末のモニターから目を離さずに彼らの会話に介入する。
「私達が抹殺投票というシステムの外から人々の動向を観測するというのも、少しばかりおかしい話よね。今の記憶とか、一時的とは言え失った状態になるんでしょ?それってしっかり記録とれるのかわからないわね。」
女性職員の参戦を待っていたかのようにもう一人の女性職員も会話に混ざる。
「それだけじゃないですよ!万が一にも私達が死んだ時とかどうするんですか!どうするんですかというよりどうなるんですか!」
話し込んでいる4人の職員を、唯一会話に参加せずに黙黙と仕事をこなしていた男性職員が呼び寄せた。
「皆これを見てくれ!統一政府からの返答はイエスだ!これで決まりだ、抹殺投票が始まる。観測者として俺達は一定期間データを取らなくてはならない事になったぞ。リック大統領は中々柔軟性があるようだ。」
ちょうどその時時計の針が0時を回る。クリスマスイヴが訪れたとは思えないほどの静けさが研究室を包み込んでいた。
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