3 ギルドとは



「立派な門だなぁ」


街の前、いや、国の前だろう。目の前に大きな門がそびえたっていた。その横には外壁が連なっている。登って越えようとするのはまず無理だろう。やらないけど。


そして門には関所があるようで、商人や、冒険者のような人たちが並んでいた。そして俺も今順番待ちをしている。


「次」

「はい」

「身分証明はあるか?」

「それが、持ってないです」

「……そうか。それじゃあこの水晶に手をかざしてくれ」


取り出されたのは綺麗な球体の水晶だ。割と大きいのによく軽々と持てるよなぁ。

言われたとおり、水晶に手をかざす。変化はない。


「ん、大丈夫だな。もし身分証明がないのなら早めのギルド入会を勧めるぞ」

「そうします」


ありがとうございます、と礼を告げ、ギルドがどこにあるかを探す。が、簡単にそれは見つかった。恐らくこの世界の文字であろうものに“ギルド”と書かれていたからだ。言語理解があって良かった。


「うわぁ、なんか、新任神様の話通りだ。役場と酒場を合わせたものって、こんな感じなのか」


中へ入ってみれば、冒険者であろう者たちが受付にいるやら、酒場で飯を食ってるやら、掲示板を見ているやらと、割とフリーダムな空間が広がっていた。


とりあえず頭の中に入れておいた手順を確認してみる。


(まずはギルド登録。粗方新任神様からは情報を貰ってはいるが、こういった場所からの情報も欲しい。食い違ってる場所があれば確かめる事もできるからな)


「えっと、ギルド登録はここでできるのか?」

「はい、ギルドへようこそ。ギルドの登録、クエストの発注はここで行っています」


カウンターは横へいくつかあり、一番左側と、その隣にある二箇所にあるのがこの受付。どうやらここではクエストの受注もできるようだ。違うカウンターではアイテムを好感している光景が見られるので恐らく換金か何かだろう。銀行の役割をしているカウンターもある。


(本当に、役場も併せ持ってるんだなぁ。ここまで機関が密集してるとは)


ひとまず、目的を済ませてしまおうと思い、受付の方へ改めて向き直る。受付に当たっているのは人間族の女性で、恐らくまだ俺より二つ上程度の年齢だろう。ほにゃりと柔らかい笑みを浮かべる姿はとても可愛らしいと思う。


「それじゃあ、ギルド登録をお願い」

「わかりました。ではまず、こちらの書類に必要事項への記入をお願いいたします。もし文字が書けないようでしたら代筆も可能ですが」

「いや、大丈夫。ありがとな」


一旦受付から離れ、近くのテーブルへと向かう。ずらっと、記入箇所がいくつかあるが、必要事項はその文字の隣に赤く印がある。とりあえず項目をざっと挙げてみると、


 ***


・氏名 *



・性別 *



・出身



・属性 *(複数ある場合は一つでも可)



・魔法



・スキル




 ***



こんな感じだ。必要事項の数は少ないので助かった。出身地なんて書けないし。


とりあえず、最低限は書いておこうという点には筆記しておいた。



 ***



・氏名 *

カミカワ マナト


・性別 *


・出身



・属性 *(複数ある場合は一つでも可)


・魔法



・スキル




 ***



「……ああ、うん。本当に必要事項しか書いてない……まあ、大丈夫か」


一つ心配なのは、属性である。無属性と言われれば、魔法はそれぞれ異なるものとなる。それを訊かれないかが心配だ。

必要事項ではないので、無理矢理訊いてくる、ということは無いと思うけど。うーん、どうしたものか。まあ、いいか。


「そんじゃ、これお願い」

「はい、わかりました。カミカワナマトさんですね」


特に追求してくる訳ではなさそうでほっと胸を撫で下ろす。いやはや、良かった。


書類を渡した後、受付員は小声で呪文を唱えていく。それによって受付員の下にあるカードに文字が刻まれ、所有者を記した。


「それでは、これがギルドカードとなります。今回は新規に作成したので代金は要りませんが、破損、紛失などの際に再発行をする場合には代金がかかりますのでご注意を」

「ありがとう」

「次に、ギルドカードの説明ですが、ギルドカードには区分が分かれております」


受付員が言うには、ギルドカードは9区分のランクに分けられるらしい。


SSS、SS、S、A、B、C、D、E、F


となる。非常事態時には強制召集はないが、特別報酬がギルドから用意されるらしい。また、ランクはクエストの達成回数、または難易度によって上昇するらしい。下落することはないが、犯罪などを起こせばギルドカードは無効となるようだ。


ランクはその人個人の実力を示すものであり、Sまではクエストの達成回数で登る事ができるようだが、SSからは難易度によってのみ上昇させる事になる。つまり、SS以上のランカーは化け物だということだ。そんなランクにまで上り詰める事ができるのは一握りの天才だけらしい。ギルド員がこんな事を言っていいのか。


クエストについては、自分のランクより低いもの、または2つ上までのものを受ける事ができる。FであればDのものまで。DであればBのものか、E、Fのものを受ける事ができるというわけだ。


「これがあなたのギルドカードです」


そして渡されたギルドカードを見てみると、




 ***


名前:カミカワ マナト

種族:人間族

性別:男

ランク:F


 ***




ギルドカードには名前、種族、性別、ランクが載っているようだ。当然、ランクはFスタート。俺自身はただ身分証明が欲しかっただけなので無理してランク上げをするつもりはない。ただこの世界をぶらぶらと回っていきたいだけだから、無理するのは嫌だ。


ああでも、稼がなくちゃ生きていけないなぁ。


「以上で、説明を終わらせていただきます。何か質問はありますか?」

「いや、大丈夫。ありがとうね」

「いえいえ。クエストはあちらの掲示板に貼り付けられています。もし受けたいものがありましたらその書類を受付まで持ってきてください。その際、ギルドカードの提示もお願いいたします。アイテム換金の際もギルドカードは必要ですのでお忘れなく」

「了解しました」

「それでは、良い冒険を」


ニコリ、と背中を後押ししてくれるような笑みを受け、ひとまず掲示板に向かう。何かいいものはあるかね。

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とりあえず異世界満喫してみよう 夢望スイ @SuiYumemi1

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