一話・森の狼と不真面目な門番


 はっきり言うとするならば、今までで一番億劫おっくうな目覚めだった。


「……頭痛ぇ」


 突然の寝起きのせいかまだ頭がはっきりしない。

 顔の前に見覚えの無い綿のタオルが揺れている。


 それよりも、まず一体ここはどこなのだろうか。俺は半ば強引に体を起こして近くにあった大木にもたれ掛かり、辺りをきょろきょろと見回してみる。


 少なくとも、俺の走ってきた道じゃこんな場所にはたどり着かないはずだ。


 もし誰かに一体何があるんだと言われても、俺の目の前には小さめの池がぽつりとあるだけ。その池は水面で太陽光をきらきら反射していて……ってなんで夜だったのに真っ昼間になってるの。

 しかも池の中に水草も魚もそれ以外の生き物すら見当たらないし。


(太陽も池も人工とか? でも偽物だとしたら、この空間広すぎだ……)


 それ以外で何かあるとしたら、俺の周りで針葉樹とも広葉樹ともつかない緑の葉が先ほどから風に揺れて楽しげに歌っていることか。公園とかでする草の匂いが俺の鼻につく。


 たっぷりと葉が茂っている枝はやけに曲線的で、幹は俺の両腕を伸ばしても足りないぐらい太く、その色も濃い緑色のものしか見当たらない。

 地面の草も緑であまつさえ辺りの大木も緑。これで空や池まで緑色だったならば、ちょっと気がおかしくなっていたかも知れない。


 勿論、全部同じ緑色では無いのだけれど。それでも目が痛くなる。


 あと、誰にというわけではないが念のために言っておくとしようか、歌っているというのは決して比喩ではない。俺は目の前の出来事をそのまま言葉にしただけだ。


「Too-ra-loo-ra-loo-ral♪Too-ra-loo-ra-li, Too-ra-loo-ra-loo-ral♪」



 混乱し過ぎたためか俺の口角は上がっていって片側が不自然に引きつり、俺は口元に苦い笑みをこぼした。いや、笑うところじゃないんだけどね。普通。


「ほんと。ありえねぇ……」

 俺に一体何がしたいんでしょうか。なぁ、神様?




 正直に言うと、まったくこの場から動く気力が湧いて来ない。けれど、ここでいつまでも乾いた声で笑っているわけにもいかない。それじゃあただの変人だ。


 ひとまずここから移動しようと思い、俺がのそりと立ち上がると一つあることに気がついた。

 むしろ、俺はなぜ今の今まで気がつかなかったのかが不思議なくらいだ。




 ——俺の制服が、どこにもない。


 いや、さすがにちゃんと服は着ている。俺もそこに気づかないほど阿呆じゃない。阿呆なのは認めざるを得ないけれど。


 今の着ている服は学校指定のシャツに、いつもきている赤色のタンクトップそれと夏服の薄い生地のズボンだ。


 え?別にいいじゃん夏服でも。冬服どっか行ったんだよ。


 ただ……家を飛び出した時には着ていたはずの詰め襟、俗にいう学ランが見当たらない。あと実を言うとシャツも。

 この変な空間に来た際に落とした、というのはさすがにありえない。いつも通りの日常で服が落ちるという状況が想像つかない。まぁいつも通りじゃないけどさ。


 じゃあ誰かに盗まれたか? けれど、それだとそいつが上着だけ盗っていった意味が分からない。普段と違って、ポケットに財布や携帯電話が入っているわけじゃないのに。


 あ、でも生徒証が入れっぱなしだった気がする。


「——ぁのぅ」


 俺がそんな具合に悩んでいると、突然小さなか細い声が耳を掠めていった。


 それは誰かが声を発したというのがかろうじて分かるぐらいの大きさで、残念ながら内容は聞き取れなかった。

 どうやら幼い女の子の声のようだが未だに俺の周りに人影は無く、それは大木のすぐ横にある茂みから聞こえた気がする。


 俺は警戒心をそのままに、辛抱強く再度話しかけられるのを待つ。


 すると、そんな俺の様子を見たためかは分からないが、茂みが微かに揺れて深呼吸ともとれる息遣いの音がこの場に響いた。


「っ……あの!」


 なんと言ったら良いのか。ええいもう言ってしまえ! みたいなやっつけ感がするのはなぜ?

 やけに緊張した少女の固い声を気にしつつ、俺はどうか危険な人物ではないように願いながらいまだ姿が見えない彼女に向けて問いかけてみる。


「誰だよ? 何で隠れてんの」


「ふく、乾いたので……」


 うん。どうやら俺の渾身の勇気は無視されてしまったらしい。

 しかし彼女がそう言った直後に、その茂みから綺麗に畳まれた俺の制服が白くて細い子どもの手によって渡された。


 その手はかなり細く片方の腕には包帯がぐるぐる巻かれている。手の小ささから考えるとこの子の年齢は……8、9歳ぐらいだろうか?


 もしや「乾いた」ということは、俺はあの池にじゃぼんと落ちたということか。ならば、彼女はもしかしなくても俺の命の恩人だ。


 やべ。ちゃんとお礼言わないと。


「ありがとう。俺……あの池に?」


 何か上手く聞けないな。そもそも自分から池に落ちた記憶は無いし。


「……はい、えと。ボクがさかな釣りにきたら、お兄さんが押し出されてたんです」


 池から押し出される人、何それ初耳なんだけど。それとあの池って魚いないと思ったんだが、水面から見える所より深い場所にいるのか?


「……池さん。きげん悪いです。お兄さんが想定外のお客さま……だから?」


(あ、なんか俺の所為っぽい?)


 その子の口調は俺を責める物ではなかったが俺に関することで困っているのは明らかだ。けれど、それが当然だろう。

 この妙な空間を俺が住む所とは別世界だと考えるなら、


 彼女にとって俺は突然現れたなわけだ。


 まだ推測だけれども、客と呼ばれるからにはこの世界の人にとってこういった現象は一般的なことであるらしい。


 俺にとってはその理由も気になるところだが、そろそろ彼女に姿を見せてもらいたい。電話とかメールとかがそうだけど、俺はお互いに顔を合わせないままで話すことは苦手なんだ。


「……お兄さん」


 俺が話しかけ方を悩んだため生まれた沈黙の途中で、再び小さな声が隣の茂みから俺に届いた。


「なんだ?」


「お兄さんは、人間……ですよね?」


「あぁ? そうだけど」


 俺には、なぜ彼女がそんなことを聞くのかさっぱり分からないが、その声が震えていることから、かなり怖がられていることだけはひしひしと伝わって来る。

 そんなに俺の口調って怖いのだろうか。結構、悲しいな。


(ん? 人かどうかを聞くってことは……人外もいんの?)


 俺はそんな適当な考え事で少し意識を飛ばしていたが、彼女の次の一言ですぐに現実に連れ戻された。



「……じゃあ、お兄さんはお客さまですか?

それとも、ですか……?」



「……犯罪にはまともに関わったことすらない」


 俺が冷静な声で返せたのを激しく褒めてやりたいところだ。可愛らしい幼い少女の声で告げられたという状況下の所為でもあるのか、発されたその単語に違和感しか感じない。



————《罪人》


(この世界ではどういう教育をしてるんだ……)


 でも、突然会った人間が安全な人物であるとは言えないのは確かだ。だったらこういった質問もしょうがないのかもしれない。

 俺がため息を吐いていると、彼女はおそるおそるという感じで口に開いた。


「たぶん案内の方がきてくれると思います……たぶん」


「案内? わざわざ?」


 案内人が居てくれるならばとても助かるけれど、それなら早く来て欲しいものだ。彼女が連呼した「たぶん」は聞こえなかったことにしよう。


 あ、でも俺は想定外なのだからその人に気づかれていない可能性もあるか。


「その人達ってどこから来るんだ?」


 俺の世界で言う警察がある——にしては、町やそれに準ずる建造物の集まりらしきものは見当たらないし、はっきり言うと見えない。緑の木々が邪魔で。

 まあ、それで俺は疑問を持ち彼女に尋ねたわけだが。


「……魔法使いの城、です……」


 俺が思っていたよりもすぐに答えが返ってきた。その声の音量は今までとあまり変わらないものの心無しか嬉しそうな響きだった。


 きっと特別な場所なのだろうその声には宝物を自慢するような響きがある。

 俺が少しほっこりして黙っていると、一体どういう場所か考えているのではと思ったようで、慌てたような声で彼女が説明してくれた。


「えと……そこがボクのおうちで、みんな一緒に住んでるんです……」


「……この世界の住人全員がだよな」


「はい……それがどうかしましたか?」


「いや、その」


(人少なっ!! もっと何万、何億って単位じゃないの??)


 俺の住んでいる地域の方がたくさん人いるんじゃないか。でも、実はその城が一個の町ぐらい大きいのかも知れないな。


 そもそもが俺の思っている建造物としての城とは違うのかも。



 そんな具合に俺が勝手に混乱して気を取られ、一切気がつかなかった。

 周囲に広がる薄暗い森の中では二人分の足音が同時に響きわたっていたことに。


「「ママのーためにー、まいごをむかえにいこ——♪」」




 その城の話をしてもらったしばらく後に俺と彼女は再び気まずい沈黙の中に居た。

 俺にはもちろん話したい事、というより聞きたい事は山ほどある。しかし、年端も行かない少女を質問攻めにするよりも、これから来るであろう案内人とやらに聞く方が良いと考えたんだ。


 正直に言うと、俺はまだ彼女に警戒されているようだから話しかけづらい。


 一応釘を刺しておくが、俺は別に子どもに怖がられるほどの強面でもないと思っている。確かに俺は目つきが悪いけれどそれはだからだ。映像を受け取る目の網膜が傷ついているのが原因で視力が落ちているらしい。


 ちなみに、一口に弱視者と言っても度合いは様々。俺の場合は少し遠くにある物の漠然とした形は分かるし、パズルのピースみたいに部分部分だけならはっきり見えている。近くならわりと平気。


 それでも昔からの癖で眉根を寄せてしまうのだ。今更直しようが無いじゃないか。

 がくりと落ち込む俺の頭上を日本では見られないような蛍光色の羽のとてつもなく大きな鳥が飛んでいく……もしかしたら俺がその鳥を見たことないだけかも知れないが。それでも日本の鳥は角なんて生えてないよな。うん。


 ここでも鳥肉って食べられてるのかね。急に焼き鳥が食べたくなってきた。まぁ、そんなことよりも今はこの沈黙がとても辛い。


「……なぁ」


「は……はい、なんですか?」


「そろそろ名前を教えてくれないか。俺は友志だ、改めてよろしく」


「ボ、ボクは……ヘル、です。よろしくおねがいします……」


 彼女の声は依然として震えているし、どんどん声は小さくなってしまうが、数十分前に比べればかなり気を許してくれているのだろう。すんなりと教えてくれた。

 俺はそのことを嬉しく思いつつ、彼女の名前について考える。


 ヘル、地獄?英語ならその意味だよな。女の子の名前にはどうなんだ?手に巻いてあった包帯といい、この子どういう境遇の子なんだ?


 俺が腕を組んで悩んでいると茂みの向こうから質問された。


「……ユーシ、どう書くのですか?」


「ん? あぁ、こうだ」


 俺は地面に落ちていた木の枝を拾って書き慣れた漢字を書いていく。

香山カヤマ 友志ユウシ


「前二つがカヤマで、後ろがユーシだ」


「ユウ……友人と、あと…」


「シ。こころざしって意味」


 そう教えれば、再び茂みから彼女の小さな細い腕が伸びて来て、地面に書かれた溝を撫でる。


「……漢字はむずかしいですね」


「なー。俺は日本人だけど、書けないやつあるし」


 この間の礼法の授業でも散々だったしな……敬語が。


(うん?)


 ふと、俺の頭にまたしても疑問符が浮かぶ。


「てか、なんで日本語通じてんの?」


 もし他に人が居たら「え?今更?」とかは言われるだろうが、これでも今の今まで緊張しっぱなしなんだからしかたない。


 しかし、俺がそんなアホな疑問を口に出しても、彼女は真面目に考えこんで一生懸命俺に伝わるように言葉を選んでくれているみたいだった。


「……お客さまの言葉は通じるんです……でも文字は、ボクたちの文字で対応するのを知らないと、意味が分からないのです……」


 なるほど、翻訳機能みたいなものか。確かに何か書いてあっても、自分の母国語にない表現だと分からないな。

 しっかし、ヘルは本当に9歳ぐらいなのか?俺よりもずっとしっかりしてる気がする。


 俺なら異世界人どころか、自分の理解の範疇を超える物があったら、大丈夫そうな他人に押し付けちまうのに。



 ……こんな、


「俺でも帰れっかな」


「あっ! ……城に行けば、きっと。いいえ絶対」


「……ありがと」


 気を聞かせて、大急ぎでフォローをくれたヘルに何度目か分からない感謝の気持ちを伝えた。


 それが十分に伝わっていてくれるといいんだが。多分完全には無理だろうな。





 そしてまたしても突然のことだった。


「……あ。来ました、案内の人……」


「マジか。管理すげーな」


「……でもなんで、いつもはあの人なのに」


 困惑したような声が茂みから聞こえて来る。内容は、声が小さすぎて聞こえなかったが、ヘルは自分の動揺や警戒心を隠そうともしてなかったので、それがビシビシ俺にも伝わって来た。


 俺も慌てて辺りを見渡すが、相変わらず周囲に人気はないし、足音も聞こえない。しかしそんな風に混乱している俺を気にも留めずにヘルは一言言い放った。


「来ます。気をつけて」


「だから誰が「「みぃつっけた—、きっかくがぃ——!」」」


 突然真上から聞こえてきた声に驚いて、俺が避けようともせずに静止していると、隣の茂みから小さな物体が飛び出して来た。

 そしてその物体は、細く俺よりもずっと小さい体で俺の体を片腕で持ち上げると、先ほどまでより掛かっていた大木から一気に距離を取る。


 おそらく間抜け面であったであろう俺は、直後にその物体の、ヘルの選択が正しいことを思い知った。


 俺が座っていた辺りに、「「せぇのー!」」と何とも可愛らしい掛け声と共に刃こぼれ一つない斧が二丁振り下ろされたからだ。


 地面越しにその振動を感じると、背筋に寒気が走った。

 一歩遅かったら、あそこには俺の……。




 ヘル、会ってすぐだとしても知っている人、そんな人がすぐ近くにいる安堵のためか俺には現れた二人の姿がはっきりと認知できた。


 長い銀色の髪は先っぽだけ緩く結ばれている。二人が着ているのは二色のチェック柄で裾が長いベストと、袖が膨らんでいるブラウス。それにスカートの前を切って開いたような服。

 履いているのはころんとしたローファー。それでよく木登りなんぞを出来たな。


 極めつけの銀色の大きな斧は、幼い少女の体躯には似つかわしく無い。


 そんな彼女達の目は、赤と青が混ざったようなマーブルと、朱色のオッドアイだ。


 楽しそうな笑い声だけを聞けば、ただの可愛い双子の女の子としか思えない。


 ……ただしあの奇行と禍々しい斧さえ無ければ、だ。そうすれば町に居ても良い意味で人目を引く容姿をしている。




 俺はぐるぐるりと回る頭を冷ましながら、俺を庇うように立つヘルに視線を移した。


 ヘルは聞こえていた声の通り女の子で麦わら色の髪の上に一対の獣耳が揺れている。彼女のマントの隙間からは、髪と同じ色で包帯が巻かれているふわふわした尻尾が見えた。形からすると犬や狼のものと一緒だろう。


 その尻尾は先ほどから、警戒しているようにゆっくりと左右に揺れていた。


 あの人間かどうかって、自分がそもそも人じゃないから聞いたのか?


「……ユーシお兄さん」


「あっと。どうしたヘル?」


「……少し待っててください。話を聞いてきます……」


 そういうが早いや、彼女は足音を立てずに双子へ近づいていく。

 こういう場面って、男である俺も行くべきなんだろうか?だが知り合いのようだし。俺はいらんことしかしない気がする。


 そんな具合に俺が悶々もんもんとしている内に、ヘルは双子との会話を始めてしまっていた。彼女の尻尾は先ほどと違い上下に激しく揺れていた。


「……お二方とも、門の番は交代されて来たのですか?」


「「ううん。門番長にはいってなーい」」


 嬉しそうに声を上げながら双子は斧を手にぴょんこぴょんこ跳ねていた。


「また怒られますよ……?」


「「げ~。それよりー、なんできかくがいはぶるぶるしてんのー?」」


 さっきから言ってる「規格外」って俺のことだろうか。俺、別に社会的には標準だと思ってるんだけど。体力とかの面で。

 あと……それよりーで流していいことには思えなかったけどいいのか。


「ユーシさん、ですよ。お二方のあいさつはお客さまにするなと毎回言われてるでしょ……」


「「そっかー、わすれてた——。しったいだしったい」」


 この世界の人達どんだけ脳筋なんだよ俺は平均的な高校生男子なのに、一切さっきの双子の動きが視認出来なかった。その上に、細身のヘルもあっさりと俺のこと持ち上げたし。


 内心ツッコミながら三人の会話を聞いていると、はたと双子と目が合いなぞの気まずい空気が漂った。


 しかし二人は俺のことをじいっと見つめてきて目を逸らしそうに無い。なんだよ負けねーぞ。


「「ごめんなさいます」」


(ふへ?切り替え早い)


 意外にも素直に謝られてしまった。謝罪の言葉が正しいものかはこの際置いておこう。二人揃って腰を折り謝って来たことに、逆に俺の方が戸惑っている状況なのだから。


 俺もヘルに手を取られて何とか地面から立ち上がってみたが、こういう時ってどうすればいいのか想像がつかない。そもそもこんな場面が初めてだ。


「は、はぁ」


「「だからさ——」」


 双子は俺の気の抜けた声を無視して、急にぱっと顔を起こすとキラキラした目で俺を真正面から見て来た。


「ヘルも」「ユーシも」「いっしょに」「みんなで」「「お城にいこー!」」


 双子は途中で躓きもせずに交互に話したため、まるで一人の人が話しているかのようにちゃんと文章が聞き取れた。


 そういえば、この二人は一卵性の双子なのかなすっっごいそっくりだし。あ、でもオッドアイの配色とアホ毛の向きが逆だ……って何見てんの俺。今気にするのはそこじゃないって。


「……ユーシお兄さん、大丈夫ですか?」


「え—と、何とか。そこに行けば帰り方が分かるんだろ」


「……はい。魔法使いさんは、すごいんです……」


「「そーだぞー。どーだ! ママはすごいんだ!!」」


 へぇ、双子の母親が魔法使いのことだったのか。まぁすごいすごいって言われても、実際に見たことが無いのであまりワクワクしないな。


 ……けれど、俺がその人に今言いたいことが一つだけある。



 この案内人、平気か?絶対人選ミスってるぞ。





「そういや、門番長いるんだな」


「「アンのじょーしだよ——」」


 自分の上司に何も言わずに来ちゃったのかよ。というかこの双子働いていい年齢なのか?

 あと、アンってどっちの名前?ああ質問が追いつかない……。


「とても、真面目な方です……」


 ヘルが真面目と言うならばかなりだろう、真面目ならいいけれど頭が固いのは勘弁。もし後者だったなら、俺その人から出会い頭に怒られそうですが。その人の仕事増やしちゃってるぜ?


「ほぉ。君等の仕事は?」


「「シゴト? ナニソレタノシイノ?」」


「おいこら……」


 さっぱりした可愛らしい笑顔で言うんじゃありません。

 なんて叱ればいいのか分からなくなるから。






※この作品はフィクションです。

犯罪行為または犯罪につながる行為を容認及び推奨するものではありません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る