第2話
何度おなじことをくり返すのだろうか。
そうすれば、わたしは引っ越しを余儀なくされる。
自分の慣れ親しんだものを捨ててゆく。
メールアドレス、アカウント、パソコン、すべてにおいて。
足跡をつけてしまったものは捨ててしまおう。
そのように今までは逃げてきたが、今となってはすべてが馬鹿馬鹿しい。
結果、放置している。
多少の知識があれば、いじるのは容易である。
裏の部分を公言することはできない。
だが、他人はこういう裏の部分の話が大好きだ。
ネットに関する法律はまだ追いついていない。
常に相手の上を行くことを意識して。
情報はもの凄い勢いで流れてゆく。
本当に頭のいい人間であれば、馬鹿は相手にせず、自分の正しいと思った知識を深めてゆく。
ネットで掲載されている話が本当だとは限らない。
この話もフィクションかもしれない。
なにが本当で、なにが嘘かは、自分で見極めていかねばならない。
わたしの閲覧履歴に関する記述をぼんやり眺める。
ああ、そんなの見ていたなと振り返る。
だが、それらはわたしが見られてることを意識して見たものだ。
本当のわたしからは乖離している。
わざと相手が目を背けるようなものを意図的に見たりしている。
罠に引っかかっているのはどちらなのだろうか。
あくまで自分の身体を用いた実験である。
わたしが掲示板に書き込んだ記述に関するもの。
それに関してああだこうだ、奴は批判する。
何度も、何度も。
ああ、しつこいったらありゃしない。
しかし構ってしまえば、すべてが終わりである。
Twitterのアカウントも突き止め、いろいろ言われだしてからは発言してはいない。
発言するクライアントまで真似され、鬱陶しく思っていた。
使っているアプリも同様である。
Twitterの画面を開き奴のアカウントを表示したまま、違う作業をしていると、画面に「一件の新しい結果」と出てきた。
新しくツイートされたのだろう。
好奇心からクリックして開いてみる。
なんで今、見ているのに返事をくれないの?
思わず握っていたマウスから手を離した。
そこまで分かっていると気味が悪い。
どうせ奴は直接なにか行動を起こすわけではない。
そのような勇気や度胸を持ち合わせていないから、このようにねちっこいのだ。
そのことはよくわかっているが気持ちが悪い。
その感情、こころが気持ち悪い。
その日はさすがに気分が悪くなって、パソコンの電源を落とした。
LINEの新着通知が鳴る。
ネットで知り合った知人をLINEでともだち追加したことがある。
それもどういった経緯か、奴つながりだったことがある。
LINEもよっぽど辞めようかと思ったが、あまりに利用している人間が多いため、辞めるに辞められなかった。
スマートフォンも眺めて、ベッドへと放り投げた。
そうしてわたしは長期の海外旅行を決意する。
奴のいないところの空気が吸いたい。
奴の顔も、住んでいる場所も、学歴、仕事、生活習慣、趣味趣向、ネット閲覧履歴、使用時間、すべて把握している。
そう、お互い様なのだ。
だが、わたしはすべてを捨てる決意をした。
もう、飽きた。興味がない。
「そろそろ向き合いたいと思っていたけれど、やっぱり結果的には逃げることになりそうだ」
「それでもいいよね」
モルモットを入れた籠とリュックだけを持って家から出て行く。そうしてわたしは、長期の海外旅行を決意する。
奴のいないところの空気が吸いたい。
奴の顔も、住んでいる場所も、学歴、仕事、生活習慣、趣味趣向、ネット閲覧履歴、使用時間、すべて把握している。
そう、お互い様なのだ。
だが、わたしはすべてを捨てる決意をした。
もう、飽きた。興味がない。
主人公
そろそろ向き合いたいと思っていたけれど、やっぱり結果的には、逃げることになりそうだ
主人公
それでもいいよね
自分に確認を取るように、モルモットにも確認を取る。
逃げたら追いかけてくるよ。
そう言われた気がした。
どこまで追ってくるだろう?
きっと、そんなこと言ったって、途中で飽きるだろうね。
どこまでも続くわけではない。
永遠なんぞ存在しない。
所詮、その程度であって、すべてにおいて中途半端で不快だ。
モルモットを入れた籠とリュックだけを持って家から出て行く。
distangle サタケモト @mottostk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます