Episode V「こっちは我慢の限界なんだよ」



「……はい?」




「だからさぁ。…なんで通じないかな、人間って」



…実はあんたも悪魔か?

悪魔と言ってること一緒なんだけど。



「…伊織、こんなブスにまで手ぇ出す気なの?やめてよ汚い」


「うっせーな黙れよお前は」



『うわ、本気モードだし』

『ゆま、お前襲われるかも』



「はぁ!?襲われるぅ!?」



ハッ。

佑茉は慌てて口を噤んだ。



(な、何よ襲われるって…)



コソッと悪魔達に話し掛ける。



『そのまんまだよ。お前牧村に性的な意味で欲情されてるぜ?』


「よ、よくっ…!?」



面白そうにニヤリと笑う悪魔が、ホンモノの悪魔だってようやく思い知った。



(なんでそんな嘘)

『嘘じゃねーぞ。俺は天使だから分かる』



マジ、で?



「いやまさか…牧村に限ってそんな、」


「何言ってんだよブース」

「あんた私に性的興奮してんの?」



「は?あんた頭おかしいんじゃないの?ブス。自意識過剰にも程があるわよ」



ケタケタと笑う伊織の隣の彼女を見て、やっぱりそんなことないよねと思い返す。



が。



「知ってんならさぁ。お前もそういう気あるってこと?ブスのクセに」



………はい?



ちょっと待て。

今否定してないよね?


しかも私がその気があるってことになって…



「いやいやいや。冗談キツい。私先行くわ」



私が立ち上がろうとするとダン、と鈍い音が響いた。


ほんの少しでもこいつにキュンとしてしまった私の胸が憎たらしい。


いや、これは悪魔のせいなんだけど。


「なんでこんなふざけた真似すんの」

「ふざけてねーっつの」


「じゃあなんで、」

「好きだから」



…は?




「こっちは我慢の限界なんだよいい加減気づけこの鈍感やろう」




…な、なんだとぉーーー!?




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