Episode IV「いい加減俺のこと好きになれよ」



翌日。


佑茉は地獄と化した自宅から出て、学校へ向かっていた。



「あれ?まゆちゃんだー。早いね、出るの」



「まゆじゃなくてゆ、ま!何回言ったら分かるんですか?先輩」



『え、先輩なの?アレで。ちょー頼りなさそーなんですけど』

『俺が先輩の方が良かったなー絶対 』



後ろで話す二人の“悪魔”にイライラする。


天使さんも結局は“悪魔”だった。

毒舌だし上から目線だし、悪魔と変わんない。


なんだ、私の周りには悪魔ばっかりじゃないか。


「ねー伊織ー。今日遊ぼー?」

「んー、どうしよっかなー」


ビクリと肩が跳ねた。


『あ、噂の伊織クンだ。イッケメンだねー』

『悪魔もやるじゃねーかよ』


何がイケメンだ。

ただウザいだけじゃないか。


ドンッ


「痛っ」


背中に鈍い衝撃が走り佑茉は倒れる。


「あっれー?居たんだ、七海さん。ブスだから気づかなかったよ~。ねぇ、伊織」


『うわ、人間めんどくせー』

『なんでこんなめんどくせーことすんだよめんどくせー』

『ていうかめんどくさ過ぎて先輩逃げてるしっ。ククッ』



あ…


ほんとに先輩逃げてるし。



はぁっ。


どうせまた牧村もブスって言うんでしょ。


なんで私がこんな奴に恋なんてしなきゃなんないのよ。



「…お前さ、自分の立場分かってんの?」



何よ、ソレ。


私に合わせてしゃがむ牧村に腹が立つ。



『…あちゃー、これはヤベェな』

『ああ、ヤられるな』



え?

と悪魔達の会話に首を傾げると、



「お前さ、いい加減俺のこと好きになれよ」



突然意味の分からないことを言われた。




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