第20話: 4-2: エピローグ2
学院からサンデルとガーランドが推薦され、私たちに加わることになった。ジェフリーとハルダーソンもほんの数日でやって来る。
この二日の調査により、帝国が遺物である様々な兵器を大量に持っていることは確かだった。そして核兵器へのアクセス権を確保していることも確かだった。マックスが衛星群について調査し、衛星群から調査したのだから、その情報を無視していい理由はない。
リエ・チェンが自我を失なった時、確かにマックスを信用できなくなった。彼は何者なのか? 第一世代はなぜ彼を作ったのだろう? 第三世代はなぜ彼を封印したのだろう? 理由はどちらも簡単なものかもしれない。それが希望だったからであり、希望にすぎなかったからなのだろう。
私たちは、また希望を持っている。だから、マックスとの関係を修復した。その後にマックスは私たちにダーク・キューブを開放した。私たちもマックスも希望を持っているからだ。少なくとも今までは。
だが、今に至っては……
私はそんな考えを抱えながらバルへ行った。あの知り合いに会えるだろうと思い。
私はカウンターから、バルのいつもの喧騒を聞いていた。喧嘩や揉め事もいつものことだ。ここにはいつもの今日があった。そして明日も、今ここにあるのだろう。
突然、肩に腕が回され、私の右に一人の男が座った。
「こうして話すのは始めてだよな」
それはいつもの声だった。その顔は微笑んでいた。どこか苦しげではあったが。私の顔も同じような表情を浮かべていただろう。
「俺たちも結社と帝国の好きにさせるのには賛成できないんだ」
「そうか」
「意外そうだな」
そういう声になっていたのだろうか。彼は言った。
「君は誰なんだ?」
私は彼の顔を見た。
「お前さんと同じさ」
彼はそう答えた。
「同じ? どういう意味で?」
「連絡役なんだ。同じだろ?」
「いや、私は連絡役では……」
そう言いかけた。だが、そうなのかもしれない。
「君は誰なんだ?」
もう一度訊ねた。
「クロノス、ネメシス。どっちでもかまわない。だがそれよりも、リエ・チェンとハセガワとマックスに巻き込まれた人間さ。ほら、同じだろ?」
「そうだな。同じだ」
彼はまた微笑んだ。私も微笑んだ。
合流する連中を待っている間に、私とタックマン、オブライエンは話し合った。帝国が強大な武力を持っていることについて。全ユーザは全力をもって帝国に対抗することは間違いない。いや、ユーザだけではないのか。だが……
「私たちが復興に積極的に介入する直前の今、もう一度、知性革命と暗黒時代を越え、復興を目指せるだろうか?」
タックマンもオブライエンも答えなかった。
帝国に対して全ユーザおよびクロノス、ネメシスによる、大規模な戦争が起こることは明らかだった。そして、それはまた地球規模の破壊が行なわれるということだ。
今はまだ遺物があった。大記録システムもあった。何より、少なくとも第一世代から第三世代までのユーザには、おそらく私たちよりも技術があった。復興を目指せるだけの技術が。その技術は希望の一つだっただろう。だが、私たちにそれがあるだろうか。その希望に手が届きそうなところまで来ている今。なぜ今なんだ。いや、今だからこそなのかもしれない。
「一つ、提案がある」
答えない二人に言った。
「大記録の複製を送り出そう」
「どこへ?」
オブライエンがやっと口を開いた。
「どこへでもない」
「どこへでもない?」
タックマンが要領を得ないという表情を浮かべた。
「地球に。そして地球外のあらゆるところへ」
また二人は答えなかった。
「もう希望はないということですか?」
「いや、そうじゃない。そうじゃないと思いたい。だが、その可能性も考えておこう」
二人は互いの顔を見ていた。
そして私たちは合意し、マックスにそれを頼んだ。マックスはいつもどおりだった。もう一度の復興の可能性について話した時も、いつもどおりだった。ただ、最後に「ではそれを始めよう」と言った時、マックスの声は揺らいでいなかった。
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