ポニテはたくさんあればいい。ポニテは一本あればいい
「ふむふむ……」
午後四時前。関東のとある高校の、その屋上。一人の男子生徒が双眼鏡を覗きながら、グラウンドを見下ろしている。彼の名前は
「いやはやなんとも……」
双眼鏡が向いているのはグラウンドの右側。そこでは陸上部が、順番に走り幅跳びの練習をしていた。次に飛ぶのは、黒い髪をポニーテールにまとめた、背の高い女子だ。
「2年B組
広崎高音が飛び終えると同時に、凌一は双眼鏡を巡らせてポニテを探す。目についたのはテニス部だ。
「3年E組
そうぽつぽつ呟きながら、凌一は他のポニテを探す。
「……おお」
凌一の目に留まったのはラクロス部の少女。髪は桜色で、もちろんポニテだ。
「1年B組
まだ活動している部活はまだまだあるが、反対側にある校門の方を見てみようと場所を移す。そろそろ帰り始めた生徒達が減って来る頃だ。だが。
「お、やっぱり来たか」
凌一はまるで宝物を見つけた子どものようにニィッと口角をあげ、双眼鏡を覗く。
「2年D
「へえ、誰を?」
「だから同じクラスの白石……を?」
後ろから声をかけられ、双眼鏡を覗いたままサッと振り向く。そこにいたのは怒りに震える顔のドアップ。
「……2年D
「思い上がるなド変態……」
瑞希は額に青筋を浮かべながら凌一の頭に踵を落とす。目玉が飛び出るような衝撃に耐えかね、凌一はその場を転がりまわった。
「な、何をする瑞希! 俺は何も
「あんたの事よ……その双眼鏡でポニテ探しでもしてたんでしょ?」
「そうだ、だから疚しいことはしていない!」
「覗きは十分疚しくて反社会的な行動だと思うけど」
瑞希が呆れて大きく溜め息を吐くと、凌一は涙目で起き上がってまだ反論する。
「確かにポニテは、大きな胸やくびれの真ん中にあるへそや柔らかい二の腕や頬ずりしたい太ももに小ぶりなお尻や汗ばむうなじや浮き出る鎖骨並に魅力的な部位だ。だがあそこまでひけらかされているものを見ないなど! 据え膳食わぬは男の恥だ!」
「あんたのフェチが予想以上に多くて引くんだけど……それとその言葉使い方間違ってるし。別にポニテにしてるのはあんたに据え膳出してるわけじゃないのよ」
「なに、違うのか!?」
「もう一回言うわ、思い上がるな……。全く、他の人に迷惑かけないように私がポニテにしてるのに、これじゃあ意味ないわね……」
「あ、それは違うぞ」
瑞希の「情けない」というようなか細い声を、凌一は手で制して真面目な表情になる。
「俺が心に決めたポニテはお前一人……他のポニテを見ても、お前以上のポニテは知らん。俺が好きなのはお前一人だ!!」
「……あんたは、唐突に何言ってんのよ……このヘンタイ」
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