第3話竜を喰べるとのこと

「………きろ……起きろ…起きんか〜!!」

「ん〜…後、5分だけ〜……」


僕は手のひらを振る。

『ムニュン!』

まるで絹のような肌触りをしたとても柔らかい『何か』に触れた。


「んっ!?何これ〜?とっても柔らかくてスベスベしてて弾力がある〜?」


掌の感触を楽しむように、『それ』を揉みほぐす。


「ひゃん!こらっ!駄目じゃ……そんなふうに揉んだら…感じて…んっ!先端がこすれて……んんっ!」


艶かしい声を聞きながらも、まだ意識は覚醒しておらず、掌の中の「もの」を揉んでいると、何か固い部分に当たったので躊躇なく『それ』を指で摘まんだ。


「〜〜〜〜っ!!そんなに先端ばかり弄られたら……意識が…飛んじゃっ…アン!!やめ…ぬか!?これ以上は本当に……あっ!!もう………無理じゃ……んっ!?」


意識は以前として朦朧としてしているが、この素敵な感触に抗える筈もなく指先の力を少し強め、固くなっている部分を挟んだ。


「あ〜〜〜〜っ!!!くんっ!?……いい…加減に…起きんか〜〜〜!」

「あべしっ!?」


強烈な一撃が僕のおでこに直撃し、もの凄い痛さとともに意識が覚醒する。

眼を開けると、そこには涙を少し浮かべ、顔を真っ赤にした綺麗な赤髪の少女が僕を覗き込んでいた。


「何か言いたい事はあるかの?」

「え〜っと……取り敢えず、何で服着てないんですか?」

「まず!それか〜〜!?」


『グサッ!!!』

彼女は素早く僕の目に指を突き立てた!


「ぎゃ〜!目が〜〜っ!!!目が〜〜!!」

「ふん!!散々、妾の乳を弄くり廻した挙句、謝罪もせぬお主には丁度良い罰じゃろうて!それよりも残された時間は少ないのでな…さっさと状況を説明してやるから座らぬか。」


僕はぶっ刺された眼をさすりながら、彼女の射程圏外に腰を降ろした。


「まずは自己紹介からじゃの…妾の名は『イグニール』先程、お主から激突された挙句、勝手に乳を揉まれた者じゃ。人族からは『紅竜煌こうりゅうおう』と呼ばれておる。」

「僕はクジョウ ツカサと言います。無意識だったとはいえ本当にすいませんでした。……って?衝突した??」


確かに、乳を揉んだのは認めるが、こんな美少女に激突した記憶は一切ない。


「この格好だから仕方ないとは思うが、紛れもなくお主は妾に激突したぞ?そのせいで、妾はこの世から存在が抹消され、お主に憑依せねばいけなくなったのじゃからな。」

「衝突…?抹消…?憑依…?」

「ふ〜…頭が悪いのぅ…お主が空から降ってきた時に激突した物があったじゃろ?それが妾じゃ!あの時は元の姿に戻っておったからのぅ…それが災いしてこんは状況を作っておるんじゃが…」

「え〜!?じゃあ、あの時にぶつかったのがイグニールさんってこと?」

「じゃから、そうと何回も言っておるんじゃが……しかし、人族が激突したぐらいでは何とも無い筈なのに何故、抹消されられたかが疑問じゃったのだが、お主を見て合点がいったわ。」

「…と言うと?」

「本来、竜族はとても頑丈で生半可な攻撃などではビクともせんのじゃ!特に妾の様な『竜煌クラス』ならなおさらな…しかし、お主は『加護持ち』じゃろ?しかもかなり上位神の……それ以外は考えれん。」


説明すると、『加護』とはパラメータを上昇させる効果があるが、この大陸を『守護』している竜煌にはさほど効果がある用なものではないらしい。

しかしながら、ツカサの持つ『加護』は異世界の…それも創造神から受けたものであり流石に竜煌とはいえ、無視できるものではなかったらしい。

早い話が、『加護』発動→『竜煌』超弱体化→隕石並の速度で『ツカサ』が落下→『両者相打ち』→『身代わり指輪』にてツカサのみ復活→現在に至る。


「と言う訳なんじゃが、妾の存在が抹消すると世界的に不味いのでな…衝突する瞬間に『憑依』する術を使用したのじゃ。こうすることで、肉体は無くなったが、お主の中に『存在』するの事になるので『守護』事態は問題なかったのじゃが、どうやら『加護』の力と変に混じってしまってのぅ…面倒な状況になったもんじゃ…」

「具体的には……??」


本音を言えば、あまり関わりたくないんだけど、この原因を作った要因は僕にもあると思うし、放っておいたら大変な事になる予感がする。


「ふむ…1番の問題は『紅竜煌』の力がお主に譲渡されたと言う事かの?本来であれば、数年もお主の中に居れば妾の力は回復し、魔力で新しい肉体を作れば元に戻れたのじゃが、今の状況では限りなく不可能じゃな。」

「それは、僕がこの大陸を護るってことですか?」

「そんな大袈裟なものじゃないがのぅ…簡潔に言うと『加護』とは、大陸の天候や気候を司るものじゃと考えれば良い。まあ、これが無くなったら彼方此方で天変地異が発生して大陸は滅亡するじゃろうな。」


いやいや……まんま同意語だよね?

そんな重大責任負いたくないんだけど………


「後の問題は些細な事じゃが、『守護』の力を持った者は自然に死ぬことができん!要するに不老不死みたいな存在じゃな…今回みたいな特異イレギュラーな状況はあるかもしれるが…こっちは、馴れれば苦ではないぞ。」

「あまり人外にはなりたくないので此方も大問題だと思いますよ?」

「ふむ…思う所は其々じゃな…さて、そろそろ話せる時間も少なくなってきておるみたいじゃし、さっさと準備をするかの?」


辺りを見渡すと、蜃気楼みたいな状態になっている箇所が確認できた。

そういえば、此処ってどこなんだろう??


「あの〜?忘れてましたけど、此処って何処なんですか?」

「なんじゃ?わからんのか?此処は『精神世界』…お主が解る様に言ったら『夢の中』というところじゃな。そんな事よりも、お主も自分の力量を確認したらどうじゃ?妾の力を取り込んだのじゃからステータスも変更されているじゃろう…」


確かに仰る通りで…

この先、どうなるか解らないし自分自身の事を知っておかないとな…

ステータス表示っと……


[メニュー]

① ステータス

名 前:クジョウ ツカサ

種 族:人族(龍人族)

職 業:異星人

LV : 318

体 力: 567800

魔 力:1298379

物 攻: 92830

物 防: 74600

魔 攻: 135210

魔 防: 83750

敏 捷: 43128

S P: 318

スキル:全種族翻訳、魔法適性、身体能力向上、超回復、限界突破、ハーレム、女難、不幸体質、竜耐性(New)、竜魔法(New)

固有特技ユニークスキル:全種族翻訳、異界の魔眼、全状態異常耐性、SP操作、創造神の加護、竜人化ドラゴンフォーム(New)、吸収(New)

称 号:転生者、神に祝福される者、落下する者、紅竜煌を継ぐ者(New)、喰らう者(New)


②〜④については変更なし(装備・持ち物・通貨)


「………何これ?」

「理解したようじゃの…妾は憑依しておるのでお主のステータスも見れるが、何度確認しても尋常じゃないのう…はっきり言って妾よりも上じゃ!この世界にお主より強い者など存在せんじゃろうな。(しかし、力を譲渡したというより喰われたと表現した方がよいかもしれんの〜…早急に調べる必要がありそうじゃ……)」


イグニールさんの心配が見抜ける筈も無く、僕はインフレ化したステータスを再度見て溜息を吐きつつ、話を進めた。


「うん…本当は此処で、色々と確認したい事があったんだけど、この状況じゃ無理だよね?」

「そうじゃのぅ…既に空間の彼方此方で亀裂が入っておるようじゃしな…他に質問はないかの?」

「じゃあ、最後に一つだけ…何でイグニールさんは全裸なの?目のやり場に困るんだけど…」


そうなのだ!

此処で出会ってから、ずっとイグニールさんは全裸だった。

特に、色々と説明をしてくれていた時なんて身振り手振りでするもんだから、あっちがタプタプ…こっちもタプタプして目が釘付けになってしまう。

ちなみに、大きさはDくらい…先端は薄い桜色だ…


「困るなら見なければいいじゃろうに……」

「いや!非常に重要な事ですよ!!」

「そんな力説されても困るのじゃが…ここはお主の記憶を媒介にした世界じゃからな…お主の欲望を反映しているのではないか?…全く!録な質問じゃないのぅ……他にはないか?無いなら妾から何個か伝える事があるんじゃが…」

「僕の方は大丈夫ですよ。」

「なら伝えるぞ!まず、妾とお主の周辺にあった装備品やら素材やらを今し方、『メニュー』とやらに入れておいたから活用するがよい、どうせ妾には無用な物じゃったしな…次に妾は力を回復させる術を探すために意識を断つので呼びかけても返事はせんのでな!最後になるが、意識が回復したら東に進むと良い。暫くしたら街がみえる筈じゃ!理解したかの?」

「解りました。本当に「眼福」なものを見せて頂き、ありがとうございます!!」

「だから、見るなと言ったじゃろ〜〜〜!!!」


イグニールさんの華麗な『右ストレート』が頬に入った瞬間、先程まで居た空間が崩れ去り、僕は現実に引き戻されるのであった。


「ぐっ……!!痛い…体がバラバラになりそうだ……しかも、妙に頬と目の痛みが際立ってるし…」


それもそのはず…

身代わりの指輪は死ぬ瞬間のダメージを肩代わりしただけで、衝突した時に負った内臓の損傷や骨折は未だに健在であり、ツカサの持つ超回復のスキルによって何とか命を繋げているのが現状であった。

頬と目の痛みは完全に自業自得なのは言うまでもないが……


「くそ…!歩こうにも…この状態じゃ…無理…だ……」


力が抜けて、目の焦点が合わなくなってきた………

やっぱり『ゲームオーバー』だったじゃんか……

あの『神様』に会ったら、絶対に文句を言ってやる…


「死に……た…く…な…」


体が崩れ落ちる瞬間に誰かに支えられた気がした。


「…………夫?……丈夫?」


その、とても優しい声を聞きながら、僕の意識は遠のいて行くのであった……














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