KATID ~孤独なクウと名探偵な彼女~

狼狽 騒

隣の餓鬼はよく客喰う餓鬼だ

第1話 プロローグ

 まずは理解しよう。



 いるのは二人。

 あるのは四つ。



 一人は私だ。

 一つは私だ。



 私は問うた。

 真実を。



 相手はガラスなのだろうか。

 ガシャン。

 そんな音が鳴った。

 まるで、

 正解だと伝えるように。



 そして一人が、

 ゆっくりと語り始めた。

 ポタポタ、ポタポタ、と。

 聞こえるほど、静かに。



 それをじっと耳にしていた私は、迷っていた。



『零』か。

『九』か。



 しかし。

 ある一言で私は、溜め息と共に決断した。




「結局は、満たされたかっただけですか」




 人間には『欲』がある。

 食欲、睡眠欲、性欲、金銭欲、出世欲……

 何故こんなものが在るのか?

 その答えは一つ。



 満たされていないから。



 人々は皆、満たされたい。

 それ故に『欲』がある。

 人々は、そのために何かをして『欲』を満たそうとする。



 だが、

 それは時として過ちを生む。



 傷害。

 強盗。

 殺人。



 それらはあまりにも欲が深いために。

 つまりは――『餓えている』ために起こしてしまう。


 

 例えば、『捨てられた子供達』。

 例えば、『人喰い』。

 例えば、『人喰い』を産み出した者。



 これらは皆 餓え過ぎたが故に鬼に――



『餓鬼』になった。




 そんな『人間』を喰らう『餓鬼』と、私は関わってしまった。



 ――いや、違う。



『餓鬼』が――『クウ』と関わってしまった。



 同情されるべきなのは『餓鬼』。

 蔑まれ、

 侮辱され、

 恨まれるべきなのは、

『餓鬼』ではない。



『クウ』が彼女達と出会わなければ、

 独りのままでいれば、

 望まなければ、



 存在などしなかったら、



 そう、だから――





 零。





 本当の『餓鬼』とは――

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