第11話 罪
◆
小学生の時の話だ。
僕の身には、とても不幸なことがあった。
ざっくり言うと、うん。両親が死んだんだ。
で、その子には一人だけ親しい友人がいたんだ。
宇生目渚。
同い年の女の子。
何で仲良かったのか、今では思い出せない。
当たり前のように仲が良かった。
で、その子も同時に不幸なことがあった。
だからとあるビルの屋上に立って。
一緒に死のうとして。
僕一人だけが生き残った。
彼女が出した手を拒んだのか。
落ちて行く彼女を止められなかったのか。
分からない。
どうして彼女が落下しなくてはいけなかったか。
彼女を僕が落としたのか。
その時の記憶がすっぽりと抜け落ちているんだ。
後に残ったのは、屋上に残された僕だけ。
そこで悟った。
覚えていない。
記憶にない。
だけど確実なこと。
それは、僕が彼女を――死なせたこと。
僕は気付かなかったんだ。
両親が死んでも、感じなかったこと。
その時、僕に必要だったものが。
どれだったか。
誰だったか。
その弱さの果てに、僕は――『究雨』を誕生させた。
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