第7話.襲撃 1
「討て!!」
誰かの号令を合図に、数人の兵士が張っていた弓の弦から手を離した。
幾本もの矢が、俺達をめがけて飛んでくる。
放たれた矢の全てが直撃する程では無いのだが、避けなければ死は免れない。
だが身体は動かない。余りにも急すぎて、咄嗟には動けなかったのだ。
「あ・・・・・・・・・」
だが、俺は死ななかった。
「ムン・・・・・・!!」
俺の前に、大きな影が立ち塞がった。ガラルだ。
ガラルは刺さりそうだった矢を、大剣の一振りで軽々と薙ぎ払ったのだ。
目標をを外れた矢が外壁に音をたてて突き刺さる。
避けられるのはともかく、まさか斬り落とされるとは思ってもいなかったのだろう、兵士達は唖然とした表情を浮かべたまま一瞬動きを止めた。
「う、おおおおおおっ!!」
一人の兵士が悪い空気を断ち切るが如く、ガラルに襲いかかる。
それをきっかけに、固まっていた兵士達が一斉に動き出した。
しかし、彼らの攻撃はそう簡単に通らなかった。
「フッ!」
ガラルは初めに襲いかかってきた兵士を足蹴りで突き飛ばした後、別の兵士を大剣で切り伏せた。
ゴーンとバサレも後に続き、ゴーンはメリケンサックのような武器、バサレは斧と各々の得物で兵士達を迎え討つ。
相手の数は30人強程で、俺達の十倍近くはいる。しかし、ガラル達3人は数での不利を感じさせない程の奮闘ぶりを見せていた。
「トオルサマ」
ガラルが低い声で唸る。
俺はその意味をすぐに理解した。
人目を忍び、闇夜に紛れ、極秘で空き巣に来たはずだった。しかし、何故か俺達は待ち伏せをされていた。
すでに俺達の作戦は外に漏れていたということだ。
何故?
そんなことは分からない。だが今気にする事はそんな事ではない。
俺達の計画が漏れていたという現状を、アトリスは知らないのだ。
相手は必ず領主宅に罠、または兵士を伏せているはずだ。
アトリスが危ない。
俺を襲ってきた兵士はガラル達が足止めしてくれている。
今の内にここを抜け出し、領主宅へ向かわなければ。
「すまん」
兵士を押さえているガラル達に短く礼を言い、俺は遠くに見える一際大きな建物に向かって駆け出した。
「待てえ!!」
だが、いくらガラル達が抑えていると言っても全員を相手にすることは無理だろう。
一人の大柄な兵士が、俺に剣を振りかざす。
クールポーションのお陰だろう。俺は特にパニックになることも無く、冷静に対応できた。
「衝波!!」
右手を突きだし、大きく叫んだ。
目では捉えにくい空気の波動が大柄の兵士に炸裂する。
「がっ!?」
大柄な兵士は身体を『く』の字にへしまげ、吐血する。
周りの兵士達が余波に怯んでいる隙を狙ってトオルは兵士達の間を縫うように駆け抜ける。
何人かの兵士がトオルを追おうとしたが、それを阻む三体の魔物がいた。
「貴様らノ相手ハ、コッチだ」
ガラルが隊長と思わしき男の首を斬り飛ばし、不気味な笑みを見せる。
「スグニ、追い付きまス・・・・・・」
○
アトリスは『影走』という
光の少ない暗闇などで使用することのできる
アトリスは壁を上りきった後、直ぐに街の奥にそびえる領主宅へ狙いを定め、『影走』を使用した。
普通ならば良い判断なのだが、今回はそれが仇となった。街の門に潜む兵士達に気づくことができなかったのだ。
アトリスはいくつもの松明が揺らめく門近くを確認し、少し焦りを覚え領主宅の窓を蹴り破った。
今の状況、少しの音では気付かない。アトリスはそう思ったのだが、それは間違いだった。
アトリスが床に着地したその瞬間、二本の刃がアトリスに振り下ろされた。
だが、二本の刃はアトリスに傷をつけることは無かった。
ほんのわずかな時間で、殺気を感じ取ったアトリスは咄嗟に身を転がし、刃を避け、襲いかかってきた二人の兵士の首もとを素早く掻き切った。
低い悲鳴を上げ崩れ落ちる二人の兵士の後ろから、二十人程の集団が現れた。
その集団を率いている男は「ほお」と感心するように声を発した。
顔には包帯が何重にも巻かれており、両目と鼻、口だけが顔をのぞかせるほどだ。
アトリスは直ぐに自分の置かれている状況を理解した。そして、目の前の包帯男の事も。
「貴方は・・・・・・」
異世界、配下軍団募集中です。 綿鳴 @watanari0103
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界、配下軍団募集中です。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます