第11話 みんなと世界の端っこ

 朝。う~ん!いい目覚めだ。昨日は鬼のおしおきも無かったし、今日もその調子でいこう。ん?布団の中が温かい・・・まさか!?

 がばっ、と掛け布団をめくるとそこには猫のように丸くなって眠っているミリアがいた。ああ、またかい。しかも何なんだそのコスチュームは、白タイツにピンクのレオタードって。エロくて可愛いけど・・・ってそうじゃなくって、とりあえず起こそう。


「ミリア、ミリア!もう朝だぞ~」

「うう、ん。・・・あ、おはようレイ君」

「おはよう、ミリア。ところで何で俺の布団で寝ているのかな?」

「え?ほんとだ。ええと・・・あ、そうだ。この服レイ君が好きかな~と思って買ったの!そんで昨日見せようと思ったんだけど、レイ君もう寝ちゃっててさ~。しょうがないから一緒に寝ることにしたの!」

「理屈が分からん」

「それより、どう?この服!」

「うん、可愛いよ、とっても。目のやり場に困るほどに」

「ええ~、もっとちゃんと見てよ!この服ね、ショップの店員さんに人間の男の人を虜にさせるような服くださいって聞いたら、おすすめされたんだよ!」

「へえ~、そうなんだ(どんなショップだよ!!)。それよりさ、そういう薄い生地のピッチリした服を着る時は、下着もちゃんと付けた方がいいと思うよ」

「下着?」

「ブ、ブラジャー」

「何で?」

「何でって・・・(乳首が思いっ切り浮き出てるからだよ!!)そ、その方が俺は好きだな~」

「うん!じゃあ次からはそうするね!」

「お願いします」



 そして朝食タイム。


「「いただきま~す」」

エ「楽しみですね!世界の端っこ!」

ユ「わのりみ(楽しみ)」

レ「ユキ・・・口に食べ物いっぱい詰めて喋らない方が良いと思うよ」

ミ「ミリアは行くの初めてだから、わくわくするな~!」

エ「私も初めてです!」

ユ「ごくんっ。私も」

ク「あたしは学校のイベントで一回だけ行ったことあるよ。凄いとこだぞ~!」

テ「わたくしも同じイベントで行ったことがあります。初めてだと本当に驚きますよ」

レ「行くのに何か必要な物とか無いの?」

ク「大丈夫。昨日あたしとティアで全部準備しといたから」

ミ「ごっちそうさま~!じゃあ早く行こうよ!」

ク「あはは!ミリア楽しみなのはよく分かるけど、少し落ち着きなよ。目的地は逃げたりしないからさ」

ミ「え~!・・・は~い」


 朝食を終えて早速6人で家を出る。全員で外出するのは初めてだな。にぎやかになりそうだ。


ミ「それでは世界の端っこに向かって~!」

エ「レッツゴ~!!」

ユ「ゴ~。・・・レイも」

レ「え、俺も?ゴ、ゴ~・・・。ところでさ、目的地まではどうやって行くのかな。徒歩?」

ク「あ、しまった。あたしらは飛べるけど、レイは飛べないのか」

テ「大丈夫ですよ。すでに手はうってありますので。あ!来ました。あれです」


 空のかなたから何かふわふわとした物がこちらに向かって飛んで来るのが見えた。あれは、見たことあるような。

 それは俺たちの前に下りてくると、その場にとどまった。


レ「あの、これって」

エ「これは、空飛ぶじゅうたんですよ」

レ「やっぱり。現世で色々な創作物に出てきたりしてたよ。まさか天界に実在してたとは、びっくりだよ」

エ「天界では天使が人間の人たちを護送する時や、連行する時に使われます。一般の人間用にレンタルもしていますが、ティアさん。レンタル代かなりしたんじゃないですか?」

テ「ええ。でもせっかくみんなでお出かけするんですから、奮発しちゃいました」

ク「そうそう。金は使える時に使ってこそ価値があるんだよ。それにどうせ経費で落ちるしな」

レ「ありがとう、ティア。俺のために準備してくれて」

テ「いえ、これくらい全然かまいません。それじゃあみなさん、行きましょうか」

「「お~う!!」」


 俺は空飛ぶじゅうたんにゆっくりと片足を乗せようとした。その時、じゅうたんから「ブー!ブー!」というブザーの鳴る音がした。


レ「え、な、何!?」

じ「トウキハドソクゲンキンデス。クツヲヌイデカラトウジョウシテクダサイ」

レ「じゅうたんがしゃべった!?あ、でも機械音声か。録音したものかな」


俺は靴を脱いでじゅうたんに乗る。脱いだ靴はエリーゼのポケットにしまってもらった。じゅうたんの上は思ったより安定していた。これならバランスを取る必要もないし、落ちることもなさそうだ。俺がじゅうたんの乗り心地を確かめていると、ユキが俺の膝の上にぽすっと乗ってきた。


「あれ?ユキは飛んでいくんじゃないの?」

「せっかくだから、ここがいいな」

「あはは、甘えん坊さんだなぁ」


 じゅたんはゆっくりと上昇し、俺たちの家はあっという間に豆粒サイズになった。おお、結構高いな。落ちたら死ぬことはないんだけど、凄く痛そうだな。あ、みんなもついてきた。


エ「レイさん、どうですか?飛んでいる気分は」

レ「うん、風がとっても気持ちいいよ。景色も良いし、最高!」

ミ「でしょでしょ!ミリア高いところだ~い好き!」

ク「え~と。グランドビーチの方角は。あっちだな。みんな、あたしが先導するからついて来て!」

ユ「どれくらいで着くの?」

テ「そうですね。このスピードですと、1時間弱ってところでしょうか」

レ「結構近いんだね」

エ「この場所は元から中間の端の方に位置してますからね」

レ「あれ、ユキ眠くなっちゃった?」

ユ「うん。レイ、着いたら起こして」

レ「うん、いいよ。おやすみ」


 美少女5人と空の旅っていうのもいいもんだなぁ。ぽかぽかといい天気だし、俺もちょっと眠くなるな。でも、寝たら落ちそうだからやめておこう。それにしてもこの中間の世界は本当に自然が豊かだなぁ。下は見てて飽きない良い景色。そして前も先行する4人のパンツが丸見えで良い景色。エリーゼが白、クロエが黒、ミリアが薄い水色の水玉で、ティアが、ええ!?真っ赤なふりふりのパンツにガーターベルト!?い、意外だ。でもギャップがあっていいかも。下の景色は次第に平野から山岳地帯へと移り変わっていった。それは結構険しく、歩きで越えていくのは難しそうだった。

 そんな下と前の景色に感動しながら空の旅は無事に終わり、目的地の上空に到着した。そして着いた瞬間に俺は世界の端っこの驚くべき光景に圧倒された。そこは世界の端っこというだけあって陸地はそこで途切れていて、その先は何も無く広くて青い空と白い雲だけがあった。陸地の終わりは白い砂浜のビーチになっていて、いくつかの川の水が流れつき透き通った青色の水が海のように広がっていて、時折砂浜に小さく打ち寄せていた。その水はそのまま広い海へ、とはならずに途中で天界の遥か下へと滝のように落ちていた。例えるならナイアガラの滝を何十倍にもスケールアップした感じだ。そして落ちていく大量の水の間には何本もの虹が掛かっていた。あまりのインパクトに俺は言葉を失っていた。


ミ「す・・ごい、ね」

エ「はい・・・」

テ「やっぱり何度見ても感動しますね」

ク「ああ、そうだな」


 あ、そうだ。ユキを起こさなくちゃ。俺はユキの肩を小さく揺らした。


レ「ユキ、ユキ。着いたよ、世界の端っこ。凄い景色だよ」

ユ「う・・・ん。わあ!ほんとだ!すっごい・・・」


 じゅうたんはゆっくりと下降していく。おお、砂浜には結構人がいるな。いや、あれはみんな天使か?・・・って!!ええ!?何で!?


レ「ね、ねえみんな!あの人たちは、みんな天使?」

テ「そうですね。ここまで来る移動手段が人間にはあまり無いので、必然的にここに来るのは天使ばかりになります」

レ「それで!何かみんな裸なんだけど!!」

ク「言ったろ?あたしたちは普段服を着る習慣が無いって」


 ほ、本当のことだったのか。それにしてもどこのヌーディストビーチですかって感じなんだけど・・・。沢山の女の子天使たちが無邪気に全裸で戯れている。これから俺はあそこに混じるのか。理性が保てるのだろうか。

 じゅうたんは砂浜の端の方に着地した。みんなも下りてきて、いそいそと服を脱ぎだした。


レ「ちょっと待って!みんなも脱ぐの?」

ク「そりゃ、あたしらだけ服着てたら変だろ」

レ「水着は?」

ユ「水着って何?」

レ「ああ、知らないんだ・・・水着」

ミ「レイ君も早く脱ごうよ!」

レ「ええ!?いや!それはちょっと!!」

ク「ああ~!みんな、レイは服を脱ぐのが恥ずかしいみたいだぞ~!こりゃ脱がしてあげるしかないよな~」

「「さんせ~い!!」」

レ「ちょっと、みんな待ってよ!心の準備が!!」

テ「うふふ!レイさん観念してくださいね!」

レ「そんな、ティアまで・・・」


 こうして俺は5人に無理やり服をはぎ取られてしまった。そして波打ち際へと引っ張られていく。俺はずっとうつむいたままでいた。


ク「レイ、いつまで手で股間を隠してんの?あはは!」

レ「う、うるさいな!それより周りの天使たちがみんな俺を見てる気がするんだけど・・・」

エ「みんな男の人が珍しいんじゃないでしょうか」

ク「ほらほら、を見せるチャンスだぞ~!」

レ「クロエ~、勘弁してよ・・・」

ミ「ほらレイ君、着いたよ!」


 ミリアにどんと押されて、俺は前のめりになり水の中にばちゃんと倒れこんだ。つ、冷たい!


レ「ぶはっ!」

ミ「ごめん、レイ君!大丈夫!?」

レ「へ、平気だよ・・・」

エ「うわ~!結構水冷たいです!」

テ「急に水に入るといくら死なないといっても危険ですから、ちゃんと準備運動しましょうね」

エ・ミ・ユ「は~い!!」

ク「ほら、レイも!」

レ「いや、でも・・・」

ク「まったく、しょうがないな~。はい!水着」


 クロエはポケットからサーフパンツを取り出すと俺に向かって投げた。


レ「あ、ありがとう!クロエ!助かったよ!でも、持ってたならもっと早く出してほしかったなぁ」

ク「いや~、レイの反応があまりにも面白かったからさ!」


 こ、このドSめ。これで俺自身の問題は解決したけど、でも周りには全裸の女の子が沢山。それにエリーゼたちもみんな裸だし・・・顔を上げづらいなぁ。


エ「レイさんも早く一緒に準備運動しましょ!」

レ「そ、そうだね」


 俺の前で跳ねる5つのお尻。ええい!もう、なるようになれ!!俺は吹っ切れて堂々とすることにした。激しく体を動かして準備運動をしながら、辺りを見回してみる。全裸でビーチバレーを楽しむ女の子たちに、全裸で波打ち際で水をかけあってはしゃぐ女の子たち。全裸で横になって日光浴をしている女の子に、全裸で泳いでいる女の子。ぷるぷると跳ねるおっぱいにぷりぷりと揺れるお尻、無邪気な笑顔に水を弾く柔らかそうな肌。あれ、ここって中間じゃなくて天国の間違いじゃないのか?ああ、何かちょっとくらくらしてきた。


ユ「あ、レイ。鼻血出てるよ」

エ「わ!大変です!」

ミ「準備運動激しくしすぎちゃった?」

テ「少し木陰で休まれていた方がいいんじゃないでしょうか」

レ「そうさせてもらいます・・・」

ク「・・・女の裸見て鼻血出す奴って本当にいるんだ」


 砂浜の側の木陰に入り上着を着て腰を下ろした。はあ、生前の世界じゃ女の子の裸なんて生じゃ一度も見たこと無かったのに、今じゃ目の前にこんなにうじゃうじゃ沢山いるなんてなぁ。嬉しいやら悲しいやら。

 あ、エリーゼたちだ。エリーゼとミリアはシャチフロートに乗ってとても楽しそうだ。ユキはティアに手を引かれながら泳ぎの練習か。クロエは、砂浜のパラソルの下でデッキチェアに座りながらジュースを飲んでくつろいでいる。ああ、俺もみんなと一緒に遊びたい。しかし、俺一人で全裸の女の子の群れに飛び込んでいく勇気は、俺には無かった。ああ、なんてへたれな俺。情けない。しかし、誰かを呼ぼうにもみんなそれぞれのことに夢中でこっちを見ていないし、大声を出すわけにもいかないしなぁ。それにこの距離じゃエリーゼの天使力で心を読んでもらうことも出来ない。おとなしくここで見ているしかないのか・・・手を伸ばせばそこにパラダイスがあるのに!!



 エ「レイさん。具合はどうですか?」

レ「ん・・・ああ、エリーゼ。もう大丈夫だよ」


 ふてくされて横になっていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。みんなは服を着ていた。


エ「よかった!そろそろお昼ご飯にしますので、一緒に行きましょう!」

レ「お弁当か何か持ってきたの?」

ク「いや、お昼はバーベキューだぞ!美味しい肉沢山食べて元気だしなよ!」

レ「うん。ありがとう、そうするよ」



 みんなと浜辺でバーベキュー。グリルの上で焼かれる大量の肉と野菜。う~ん、いいにおいだな~!そういえば俺、バーベキュー初めてだ。うちは家族でキャンプとかしなかったし、一緒に行ってくれる友達も俺にはいなかったからな。みんながいてくれて本当に良かった。


ミ「あ!レイ君楽しそう!元気出た?」

レ「うん!よ~し、沢山食うぞ~!あれ?ユキがいないけど、どっかに行ったの?」

エ「ユキちゃんはさっきまた波打ち際の方へ行きましたけど」

ク「あ、戻ってきた」


 ユキは両手で何かを抱えて走りながら戻ってきた。


ユ「ただいま。これも焼いて」


 ユキがグリルの上に巨大な紫色のウミウシみたいな謎の生物をどかんと乗せた。それはグリルの熱さにうねうねと身体を動かし、もだえ苦しんでいた。


レ「ユ、ユキさん。この気味の悪い生物は一体・・・」

ユ「ムーラだよ。さっきティアに泳ぎを教わっている時に見つけたの」

レ「かなり苦しんでいらっしゃいますが・・・」

ク「大丈夫だよ。天界の食材は見た目は初めて見た時にはショッキングでも、味は良いって分かってるでしょ?」

レ「しかし、これはまた一段とショッキングな光景だな・・・」


 そのムーラとかいう生物はやがて動かなくなり、水分が抜けたのか身はどんどん小さくなって、焼きあがった時には手のひらサイズにまで縮んでいた。ティアがそれを輪切りにスライスしてお皿に盛りつける。


テ「さあ、みなさんどうぞ」


 俺は恐る恐るその一つを手に取り、端をかじる。チーズみたいな濃厚な味だ。でも、食感は貝みたいなこりこりとした感じ。慣れれば美味しいかもな。


ク「あ~、美味しい!これにはやっぱりヒテヒテが合うよな~。飲みたくなっちゃうよ」

エ「だめですよ、クロエさん!帰りも飛んで帰るんですから!」

テ「お肉とお野菜ももう焼けてますよ。沢山あるのでみなさんいっぱい食べてくださいね」

ミ「は~い!」

レ「ミリア、一度に皿に取りすぎだよ。あ、ユキもそんなに山盛りに!」

ユ「レイ。バーベキューは戦場だぜ」

レ「意味が分からん」


 こうして俺はみんなとわいわいとバーベキューを楽しんだ。



 レ「あ~、もう腹いっぱいだ~」

エ「美味しかったですね!」

ユ「燃え尽きたぜ。コンロの炭も、私の食欲もな」

ク「この後どうする~?」

テ「そうですね。腹ごなしにお散歩でもしましょうか。この砂浜の隣に遊歩道があるので」

ミ「さんせ~い!」


 遊歩道は崖に沿ってつくられていて、崖下の青空を目いっぱい堪能できた。


レ「この下は地獄に繋がっているのかな」

エ「そうですよ。といっても地獄はすっご~く下の方にあるのでここからじゃ見えないですが」

ミ「いい風だね~。ミリア飛びたくなっちゃう!」


 そう言ってミリアは崖から飛び出しふわふわと遊覧飛行を始めた。


レ「あはは!ミリアは本当に元気だなぁ」

ユ「レイ。手、つなご」

エ「あ、私も!」

レ「うん、いいよ」


 右手にユキ、左手にエリーゼ。両手に花ってこういうことかな。


エ「あっ!あそこに綺麗なお花がいっぱい咲いていますね!」


 エリーゼが指差した方向を見ると木々の間に可愛いピンク色の花が沢山咲いている低木があった。みんなと一緒にその場所に駆け寄る。


ミ「うわ~!とっても綺麗~」


 ユキはポケットからテディベアのホタテを取り出して抱きかかえた。


ユ「ホタテ綺麗なお花がいっぱいだよ。一緒に見ようね」

テ「これはアザレアの花ですね」

レ「へえ、ティアは花に詳しいんだね」

テ「ええ、少しだけ。以前花言葉を調べるのが趣味だった時があるので。ちなみにこのアザレアの花言葉は何だと思いますか?」

レ「う~ん。さあ、分かんないよ」

テ「うふふ。アザレアの花言葉は、愛されることを知った喜び、ですよ」


 愛されることを知った喜び、か。今の俺にピッタリの花言葉だな。


レ「この花、いくつか貰ってってうちに飾ろうか」

エ「いいですね!私もこの花、好きです!」


 その花畑でゆっくりとくつろいだ後、日が沈む頃に俺たちは再び砂浜へと戻ってきた。夕日が水に反射して辺りは一面オレンジ色に輝いている。天使の数はだいぶ少なくなっていた。これなら俺も普通にしてられるかな。


ミ「ねえ、みんなでもう一度遊ぼうよ!今度はレイ君も一緒に!」

エ「何して遊びます?」

ク「ビーチバレーはどう?3対3でさ」

ミ「お!負けないよ!」

レ「よし、じゃあ動きやすいように上着を脱いでおこうかな」

ク「ならあたしたちも脱ごうか」

レ「え?ちょ、ちょっとまさかまた全裸になるの!?」

テ「わたくしもさすがにロングスカートでビーチバレーはできないので」

ク「まだ慣れないの?女の裸に」

レ「そりゃ慣れないよ!逆に慣れちゃったら楽しみが減るっていうか。いや、そうじゃなくて、じゃあ下着だけでも着けててよ!」


 こうして何とか全裸ではなく下着を着けてのビーチバレーが始まった。下着姿でビーチバレーっていうのも何か変だけどなぁ。でも、これはこれで悪くないかも。みんな可愛い下着だしさ。それにしてもやっぱりティアのガーターベルトは大胆だな。

 チーム分けはくじ引きで、俺、エリーゼ、ユキチームとクロエ、ティア、ミリアチームになった。


レ「2人とも運動は得意なの?俺はあまり自信無いんだけど」

エ「私は結構得意ですよ!体を動かすの好きなんです!」

ユ「私はあんまり、普通、かな」

レ「そっか。俺ビーチバレーってやったことないんだけど、どういう作戦でいこうか?」

エ「とりあえずボールを取れる人が取って、打てる人が打つって感じでいきましょう!」

ユ「OK」

レ「それは作戦なのか?」

ク「じゃあ始めるよ!」


 まずはクロエのサーブ。げっ!いきなりジャンピングサーブかよ!?エリーゼがそれを受けてボールを高く上げる。エリーゼ、ナイス!


レ「ユキ!それをこっちに繋げてくれ!」

ユ「任せて!」


 ユキはポンと手でボールを跳ねたが、あまり上がらなかった。くっ、これは向こうに軽く返すしかないな。俺はボールを下からすくうようにして相手側にボールを返す。とその時、クロエが俺の目の前で高くジャンプした。そして強烈なアタック。ボールは俺の顔面にクリティカルヒットした。ぐっ!いくら軽いビニールで出来たボールとはいえ、まともに当たるとそれなりに痛いな・・・。


ユ「レイ。大丈夫?」

レ「うん。平気だよ」

ク「甘いな~、レイ。本気で来ないと勝てないぞ~!」

レ「くっ!そっちがその気なら、やってやるぞ~!」

エ「レイさん!頑張りましょう!」


今度はこちらのサーブ。ここは俺がいいとこ見せなきゃな。クロエみたいなジャンピングサーブは無理だけど、思いっ切り打ってみよう。バンッ!!よしっ!うまくいったぞ!ボールは勢いよく高く飛んで相手側のエリアへ。これは簡単には取れないぞ。って、ミリア!?ミリアは空へと飛びあがり、ボールの側まで来るとそれを下に向かって思いっ切り両手で叩いた。


レ「げっ!ボールがこっちに勢いよく落ちてくる!どうしよう!」

ユ「レイ。肩車」

レ「え?今?」

ユ「早く!」

レ「わ、分かったよ」


 俺はユキを肩車する。


ユ「レイ。もっと左。あっ、行き過ぎ。ちょっとだけ右。そうここ!いくよ、ホタテ!ホタテアターーーック!!」


 そう言うとユキは右手に持ったテディベアのホタテを使ってボールを思いっ切り打った。かわいそうなホタテ。下にいる相手の2人はそれを取り切れず、ボールは地面に落ちた。


エ「やったー!ユキちゃん凄いです!!」

ユ「ホタテのおかげ」

レ「うん、いっぱいホタテをねぎらってあげて」


 次はティアのサーブ。ゆさゆさと揺れるティアの大きなおっぱい。思わず目が釘付けになる。


エ「レイさん!ボール来てます!」

レ「あ!しまった!これも相手の作戦か?」

ク「いや、そんな作戦立ててないよ」


 俺は倒れこみながら何とかボールを弾いたが、それはネットに当たって地面にぽとりと落ちた。


レ「ごめん!」

ユ「どんまい、レイ」

エ「まだまだこれからですよ!」


 続いてこちらのサーブはエリーゼ。エリーゼは軽くボールをぽーんと投げた。げっ、それだと相手のチャンスボールになっちゃうよ。思った通りクロエがダイレクトアタックの体勢に入る。そして飛び上がるクロエ。その時、俺の横をエリーゼが一瞬で通り抜けた。クロエが強くボールを叩く!だが、エリーゼが両手で素早くボールをブロック!それは見事に成功してボールは地面に落ちた。


レ「凄い!エリーゼ凄いよ!!」

ユ「ナイス、エリーゼ!」

エ「へへ~。やりました!!」


 両手を腰に当て胸を張って得意げにするエリーゼ。


 勝負は一進一退を繰り返していった。そしてラスト、あと一点取った方が勝ちという局面を迎えた。


レ「みんな、あと一点絶対取ろう!!」

エ、ユ「「お~う!!」」

ク「よ~し!絶対勝つぞ!!」

テ、ミ「「お~う!!」」


 サーブはこちら。打つのはユキ、というよりホタテ。ユキはボールを上に向かって高く上げると、ホタテを持って野球のバッターのように構えた。ボールが落ちてくると、ユキはホタテをフルスイングしてそれを打った。ああ、かわいそうなホタテ。ボールは凄い勢いで相手側へ。これはサービスエースになるんじゃないか?


ク「させるか!!」


 クロエは素早く横っ飛びをして、何とかボールを腕に当てた。それをティアがうまく繋いで、ミリアのアタック!


ミ「いっけ~!!」

エ「させませんよ!!」


 エリーゼのブロック!しかし、ミリアは飛びながらうまく高度を調整してタイミングをずらして、エリーゼのブロックをかわした。


ミ「エリーゼちゃん、あま~い!そりゃ~!!」


 ボールは俺の方へ。この距離なら届く!


レ「それっ!!」


 ボールはユキの方へ。ユキはボールをエリーゼの方へうまく送った(ホタテ未使用)。


ユ「エリーゼ、頑張って!」

エ「任せてください!!」


 エリーゼのアタック!ボールは勢いよくティアに向かって飛んでいく。


テ「わ、わ、わ!」


 ボールはティアのおっぱいに当たって、跳ね返る。反動でぽよんぽよんと揺れるおっぱい。う、またしても俺の目が勝手にそちらへ。


ミ「ナイス、ティアさんのおっぱい!クロエさん、頼みました!!」


 ミリアがボールを繋いでクロエに送る。


ク「任せろ!おりゃ~!!」


 ボールは俺の顔面へ本日2回目のクリティカルヒット。


ク「やったー!最高~!!」

ミ「わ~い!勝った~!!」

テ「やりましたね!」

レ「ま、負けた。ティアのおっぱいに負けたよ・・・」

ユ「残念」

エ「負けたのは悔しいですけど、でもとっても楽しかったですね!」

レ「そうだね。楽しかった!」

ク「ビーチバレーに夢中で気付かなかったけど、日が沈んで辺りがすっかり暗くなってきちゃったね。この格好だとさすがに寒いから、みんなも服着た方がいいよ」

ミ「はーい。あ~、ミリアお腹空いちゃった」

エ「いっぱい運動しましたもんね」

テ「それでは、お夕飯にしましょうか」

ユ「やった!メニューは何?」

テ「うふふ。カレーライスですよ」



 みんなで一緒に料理。みんなが食材を切っている間に、俺は飯盒炊爨はんごうすいさんでコメを炊く。


ユ「レイ。火加減平気?」

レ「うん。調節が難しいけど、うまくいってるんじゃなかな。ユキはどうしたの?」

ユ「私は包丁だめでした」

レ「あはは、そっか。じゃあこっちにおいで。一緒にやろうよ」

ユ「了解です」


 火の加減を見ながら、時折火の中に薪をくべる。しばらくするとユキが俺に寄り掛かってきた。


レ「ユキ。眠くなっちゃった?沢山遊んだもんね」

ユ「大丈夫。カレーを食べるまでは、何があっても眠れないから」

レ「無理しないでね」


 それにしても燃える火って見てて落ち着くなぁ。そういえば生前、ネットの番組で暖炉で燃える火だけをずっと放送しているのを見てたことがあったっけ。何か俺もちょっと眠くなってきたかも。


 ぴんぽ~~~ん


 はっ!?何で!?どうして今!?一体何が起こったんだ!?


レ「ユキ、ちょっとここにいて火を見ててくれる?」

ユ「ラジャー」


 俺はエリーゼたちの方へと急ぐ。


レ「みんな!一体どうしたんだ!?」


 辿り着くとエリーゼとミリアがぽろぽろと涙をこぼしていた。そして2人が切っていたのは、あ、玉ねぎ・・・。


ミ「ごめんね~、レイ君」

エ「ごめんなさい~」


 そして現れた赤鬼。


赤「よう、昨日は会えなくて寂しかったぜ」

レ「ははは・・・今日も大丈夫だと思ったんですけどね・・・」

赤「そんじゃ、張り切っていくぜーーー!!」


 ばーーーーーーん!!!


 俺は棍棒で高く打ち上げられた。ああ、さっきのボールみたい・・・。


 ばちゃん!!


 俺は水の中に落っこちた。うわ、ずぶ濡れ。水着着てて良かったな。

 服を着替えてユキのところに戻る。


レ「ユキ。一人で大丈夫だった?火の調節出来たかな」

ユ「バッチグー」


 ユキは親指を立てて言った。そしてみんなも集合する。クロエが食材の入った大きな鍋を持ってきた。


テ「ではその隣でこの鍋も火にかけますね」


 みんなで火を囲んで出来上がりを待つ。ふとエリーゼが何かの歌を口ずさみ始める。やがてそれはみんなに伝染して、小さな合唱になった。やっぱり天使は歌が上手だなぁ。



エ「それではみなさん、いただきま~す!」

「「いただきま~す!」」


 みんなでつくった料理はまた一段と美味しかった。ご飯はちょっぴり焦げていたけれど、それもまたいい味になるよね。ん?この味は。


レ「ねえ、エリーゼ。ひょっとしてさっきのムーラを入れた?」

エ「はい。余っていたので、隠し味にいいかな~と」

レ「そうだね。意外と合うかも」

ク「げっ。キャンディー入れたの誰だよ!」

ミ「ミリアだよ!甘くなって美味しくなるかなって思って」

ク「溶けてないよ!」

テ「ユキちゃん、美味しいですか?」

ユ「うん。待ったかいがあった」

レ「それは良かった。ユキも一緒に頑張ったもんね」


 ユキはカレーを口いっぱい詰め込みながら、親指を立てる。

 こうして楽しい夕食の時間は過ぎていった。



 帰り道。行きと同じようにユキは俺の膝の上で眠ってしまっている。エリーゼも疲れたのかじゅうたんに乗って、俺に背中を預けてすやすやと寝ている。横を飛んでいるティアが話しかけてきた。


テ「今日はとっても楽しかったですね」

レ「うん、凄く楽しかったよ」

ク「あたしもだよ。みんなと行けて良かった」

ミ「ミリアもすっごく楽しかった!また絶対行こうね!ああ、でも他のところもいいなぁ。後で本を見て調査しなくっちゃ!」

レ「ぜひ安全なところでお願いします」


 こうして俺とみんなとの初めてのお出かけは、素敵な思い出となった。これからもこんな思い出が増えていくといいな。

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