'ehiku、ハワイの言葉で7の意味。

22

 Anuenueのオーナーである長谷川慧はせがわけい氏は、和希にレモンとライムを、私に苺を頼まれた英くんと共に十二時直前にやって来た。苺の香りが部屋に入ってくる。

「あっちで娘が寝ています」

 私が言うと、何その敬語、と英くんが面白がった。

「だって永遠の二コ上じゃん」

 笑顔で返すと、長谷川慧なにがしと目が合う。

「ケイくんでいい?」

 何で今度はタメ語なんだよ、と英くんがウケている。素面のはずの英くんはテンションが高い。迷惑な人だ。


 窓を開けて外のビオトープをiPhoneのライトで照らす。

「螺鈿光……」

「らでんこう?」

「ヒカリメダカの種類。人気がある改良種だよ」

 湘くんが譲ってくれたのは螺鈿光というヒカリメダカ……。


 ダイニングテーブルの上に置いたガラス製の水槽の中に無数の稚魚が泳いでいる。

「店の屋上で飼ってる白メダカが、やっぱりこれくらい産んだんだ」

 メダカは一度受精すると三、四回は産卵するらしい。

「金魚すくいをやるような平たいでかい水槽あるじゃん。あれに卵が着いた水草を入れていった」

 金魚すくいのような水槽を一階の庭に置いたら、隣の猫のプールになってしまうと思う。

「うちは、ビオトープに入るだけで十分だよ」

「あの鉢だと二十から三十匹だね」

 稚魚は五十匹は下らないだろう。数えれませんが。

「……買い取って!」

「えーいくらで?」

 笑い出しそうな顔で慧くんが言う。

「スニーカーが欲しい。ヒデくんとこヴァンズ入ってる?」

「サイズが合いそうなのはネイビーのスケートハイだけだな」

「では。そのスケートハイと稚魚五十匹を交換で」

 と私。

「プロパーは一万二千だけど一万で売ってやるよ」

 と英くん。

「一万割る五十匹?」

 と私。

「螺鈿光は一匹二千円前後で売れるんだよ」

 へー。マジで。

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