holoholo

'elima、ハワイの言葉で５の意味。

１７

　ベタは熱帯魚で寒さに弱い。冬を越して二年以上生きる個体もいるとオーナーらしき彼は言った。二年以上……。たった二年？

　細い路地を山側に登り水平線を背に、私の足で十分程歩くとＡｎｕｅｎｕｅの看板が見える。

「こんにちは」

　オーナーらしき彼と挨拶を交わす。

「お店のオーナーさんですか」

「そうですね」

「そうですか」

　何だか間が抜けた会話だ。

　やはりオーナーだった彼は、改めて見ると少し強面で、短くカットされた黒い髪に、耳にはボディピアス、顎髭。ネイビーブルーのラルフローレンのパーカが遠目にトラディショナルなタイプにも見える。パーカの下は黒いチノとヴァンズのグレイのオールドスクールハイカットを履いていた。

「グレイのオールドスクールは初めて見ました」

「あ、スニーカーですか。ヴァンズ好きですか」

　私より少し年上かもしれない。

「十代のときにトリコロールのスケートハイを初めて買って、ミッドのネイビーと、オールドスクールはローの黒とカモフラージュを履いてました」

「今は価値が上がってそうなラインナップですね」

「そうですか。今は持ってないんです。引越しを繰り返してて……。その度に大切な物も置いてきたから」

「あ……。分かりますよ。俺も元カノの家にＣＤを置いてきて全部捨てられました」

　何だか楽しいけれど、話題を魚に戻さなくては。

　雌のベタを見せてもらった。雄に比べて鰭（ひれ）は小さく色は地味で、単体で飼育するには魅力に欠けている。しかしその中にも白っぽい体に綺麗な赤い鰭を持つ雌を見つけた。三百八十円。

　ベタは雄と雌を混泳させられない。雄が雌を殺してしまうか、雌が雄の鰭に食い付いてぼろぼろにしてしまうらしい。

　カイと同じ水槽のセットと水草を買った。六月までにベタたちのためのヒーターを買いに来なければならない。