'umikūmāiwa、ウミクーマーイヴァ。ハワイ語で10と9の意味。

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 十一月になった。今年の春のことは、まだ半年しか経っていないというのに昔のことに思えた。Anuenueでは私を「奥さん」と呼ぶ業者や常連客がいた。慧くんがそれを否定しないのが嬉しい。確かに目立つペアリングをしているしなー。

「何笑ってんの? お前、思い出し笑い多くない?」

 慧くんは滅多に「アイ」と呼ばなくなった。お前、と言われるのには慣れた。引越してから出会った作家のミステリーの中で、十六歳のヒロインが「お前、と呼ばれるのが死ぬほど嫌い」と言っていたのを思い出した。

 先月の小学校の運動会。瑠夏は慧くんに来てもらいたがっていた。お父さんは退院していたけれど、店頭を頼む訳には行かない。二人で揃って行くのは無理だった。寧人くんファミリーや、学校に数名いる湘くんの友人のことを考えてほっとしている自分は最低だった。病気のせいなんかじゃなく落ち込む。贖罪というのはなんだけれど、久し振りにハンバーグを焼いたり、早起きして弁当を作った。たくさん焼いて、しめじと玉葱のソースで煮込んだハンバーグをAnuenueにも持って行った。ジップロックに入ったハンバーグは、そのままディスカスの餌を連想させて笑えた。今年の初めに泣いてばかりだった私がよく笑うのは、慧くんと瑠夏と和希たち朱里たちのおかげだ。

 運動会が終わってすぐの定休日に瑠夏を休ませた慧くんは、見に行けなかった穴埋めにみなとみらいに連れて行ってくれた。慧くんはワールドポーターズの2Fのデッキのショップを廻るのが好きだ。雑貨屋でバイクが載っているLIFEのボードを買ってガレージに飾ったり、一つ百円のPEZを欲しがる瑠夏に買い与えたりしていた。バンで葉山に戻る時、遠回りをして海岸線を走る。真名瀬しんなせ港で国道一三四号線を一瞬離れ、更に海際のルートを通った。狭い一方通行の道に、後ろから車が来るまでバンを止め、三人で裕次郎灯台と海の上の鳥居と江の島と富士山と、海を照らしながら沈んでいく午後の陽を眺めた。

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