エピローグ

第終話 二人の世界

神殺しより5年。

城の復旧や、魔王軍の再編などなど。

大量の雑務を処理しているうちに、あっという間にときが過ぎていた。

その間、ユリンとマグはその想いを育み……

いい加減にしろ、と周りからも言われ続け、ついにこの日を迎えた。


「これより、魔王マグラニスト、勇者ユリンの婚礼の儀を執り行う」


ワァァアアアアアア!!!!!


新たに立て直された魔王城にて、魔王と勇者の結婚式が行われていた。

城下には多くの魔物と、そして、多くの人間が集まっていた。


「て、ゆうてもやなぁ。あてにこないなかたっ苦しい儀式なんて、できやしまへんよ??」

厳かな雰囲気で宣言したカキツバタであったが、その直後にこんなことを言い出す。

「あはは、いいよいいよ。私も堅苦しいの苦手だもん。ね、マグ兄」

「そうだな。我々には似つかわしくもないしな」

「ああでも」

「ん?」

「あてらの大事な大事な箱入り娘、少しでも不幸にしたら許しまへんえ?」

「ふ、愚問だな。ありえぬ」

「ちょ、ちょっと、なにその箱入り娘って!」

「そら、あんさんのような世間知らずの子のことや?」

「いやいやそういうことじゃ・・・って、え?私世間知らず!?」

「自覚なしか」

「うむ、自覚なしだな。そこが可愛い所だが」

「それにはあても同意や。なんや、魔王はん。実は気ぃ合うんか?」

「はっは!そのようだな!」

「ちょ、ちょっと!なにその変な同盟!!!」

これらの会話はカキツバタの拡声魔法により広く拡散されていたのだが。

最後までユリンは気付くことはなかった・・・。


「さて諸君!!!

 この魔王と勇者の婚礼によって、ユウマ王国の設立を宣言する!!

 ここでは、魔のモノだろうが、ヒトであろうが、全てが自由に行き来することができる!!

 我は魔族の王なれど、ヒトと添い遂げることを選んだ。

 はっきり言って、こんな面白いことはない!!

 さあ諸君。この世を謳歌しようではないか!!!」


婚礼の宴は、それより三日三晩続くことになる。


「しかし、ユリンよ。本当に良かったのか?」

「ん?ふぁには??」

ウェディングドレス姿で肉を頬ばりながらユリンが答える。

「ごめんごめん、なんのこと?」

「王国とのことだ」

「ああ」

聖王国の宮廷魔術師の監視魔法により、神殺しの一部始終はまたたく間に人間界へ伝わることとなっていた。

それを受けて、ユリンの元へは『聖王国内での地位』が約束されていたのだ。

「いいのいいの。

あんな、1万イェンしかくれないわ、それまでなんの支援もしないわ、その癖美味しいところだけ持って行こうとする聖王国には一切義理はないしね」

「そうか」

「それに。あいつらのマグ兄を見る目が気に入らなかった」

「はは。それは仕方あるまい。これまで倒すべき敵として対峙していたのだ。

はい、仲良し!とはいかんだろう。

残念ながら、俺も魔族も人を殺しすぎた」

「それを言ったらお互い様でしょ。

私だって、王国だって、魔族を殺しまわったんだし」

「ユリン・・・」

「だからね、きっとどこまで行っても私達と彼らは相容れることはないんだよ。

だから、いいんだ」

「そうか・・・」

「うん・・・」


「そんなことよりさ」

「マグ・・・はさ、私のこと幸せにしてくれるんでしょ?」

この5年、『兄』をはずすことのできなかったユリンだったが。

意を決し顔を真っ赤にしながらマグを呼ぶ。

「ユリン・・・!」

「な、な、なんでそんな食いつくの!?」

「いやいや、だって、なぁ。

確かに魔族は長い時を生きるとは言ってもだな、5年待たされたんだぞ?

俺はいつまで兄でいればいいんだ!?って」

「え、ええー!そんなこと思ってたのー!?」

「プレッシャーを与えると余計に呼ばなそうだから、気を遣ったものだよ」

「ちょ!な、なにそr・・・・・・」

ユリンの叫びは、マグの口によって飲み込まれる。

「・・・・・・。

これ以上ないくらい幸せにしてやるから!」

「・・・うん、任せた!」


これから先のラブコメは・・・・・・二人だけの世界のお話。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王が勇者に恋をした ただみかえで @tadami_kaede

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ