第4話-5 神殺し

「マグ兄!!」

「ああ、ユリン!!!」


『これで決めるぞ!!!!』


「おのれおのれおのれおのれおのれええええええええ」

ドゴアアアアアアアア!!!!!!


大規模な爆発と共に、ついに破壊王は滅び去った。

決戦開始より、3日。

半分以上を瓦礫の山となった魔王城を背に、勇者と魔王は互いに顔を見合わせる。


「ふーーーーー。や~っと終わった…」

「ああ、なんとか、終わったな」

「マグ兄の部下の人たちが来てくれなかったら危なかったねー」

「そうだな。ユリンを迎え入れるために、一旦城から離れさせていたからな。間に合ってよかった」

「うんうん。

 やー、でも。

 本当に神殺しをすることになるとはねー」

「神殺し、か。

 まぁ、神、と言っても、自称神、だったがな」

「ふふ、たしかに!」

そうして笑い合う二人。

力を使い果たしたか、その場にへたり込んだままではあったが、その顔にはやり遂げた達成感が見て取れた。


「とりあえず…」

「うむ。色々と考えなければいけないことはあるが…」

「しばらく何もしたくなーーい!」

「…だな!!」


――――


破壊王が滅び、勇者システム呪いの力は失われていった。

(寝て起きれば全て回復するのって便利だったなー)

ベッドに横になりながら思う。

あれから1週間、ユリンは勇者システム呪いの消失と共に勇者の力を失っていた。

とはいえ、これまでに鍛え上げてきた剣技などのスキルは覚えているし、魔法の全てが使えなくなったわけではない。

ただ、勇者システム呪いによる特殊能力はユリンに多大な負荷をかけるものであったらしく、ベッドの上で生活をするはめになっていた。


コンコン


「ユリン、調子はどうだ?」

「あ、マグ兄…」

マグの訪問に体を起こそうとしたがうまくいかず、再度ベッドに沈む。

「ああ、無理に体を起こさなくてよい」

「ごめん」

「仕方あるまい」

そう言うと、マグはベッドの横に座り、ユリンの頭を撫でる。

優しい空間。

しばらく、お互いに何も話すことはなく、無言で見つめ合っていた。

「ユリン…」

「マグ兄…」

そのまま顔が近づき……


「さ、さて。あまり入り浸っていてもラジーのやつに怒られてしまうからな。

 また、くるよ」

「う、うん…」

真っ赤な顔のユリンを残し、マグは部屋を出…ようとして、戻ってくる。

「ユリン」

「な、なに…?」

いつになく真剣な顔に、何事かと身構える。

「これを…」

そう言って、マグは懐から小さな箱を取り出す。

「人間の風習なのだそうだな。ラミーから聞いた。

 これからも、ずっと俺と一緒にいてくれないだろうか?」


(うーん、これからどうしようかなー。戦いはもう終わったし、ていうかもう戦う力も相手もいないし。

 元々国のバックアップなんてなかったわけだし、魔王倒したわけでもないしなー…あ、神は倒したな!

 …うん、報告しようがないな!

 マグ兄もどうするんだろ。


『ユリンさえいれば、魔王でいる必要すらないんだがな。

 俺の力で押さえていないと暴れたいだけの奴らが野放しになってしまうんで、力を捨てるわけにはいかんが』


 とかって言ってたっけ。

 共存、出来ないのかなぁ。

 出来ると思うんだけどなぁ…………)

左手の薬指にはめた指輪を眺めながら、ユリンはそんなことを考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る