幕間2
幕間2 魔王と勇者と仲間と仲魔
――元貴賓室。
広い広い玉座の間をほぼ端から端まで横切った先に、目的の小部屋があった。
魔王城となってから使われていなかったが、それゆえ、調度品から内装から、王国時代のもののままであり、魔王城内と思えぬほど気品に溢れた部屋であった。
窓からは暖かな陽が差し込み、窓から臨む視界の先には(元)王国領が全て見渡せるようであった。
ガチャ
「お、来たねユリン」
「…うわぁ……ほんとにマグ兄だぁ……」
「ラジーには散々反対されたんだがな。この姿を見せるのが一番わかってもらえるかと思ってな」
「当たり前です、魔王さま。完全に魔力を封印した状態で
「敵意はないし、戦う気もないんだ。『敵』ではない」
扉を開けた先には。
無防備に、一切の敵意もなく。
それどころか、本当に魔王なのか?と問いたくなるような慈愛をユリンに向けながら、魔王が、いや、かつて故郷で出会ったままの「勇者研究家マグ」の姿があった。
「えっと、マグ兄、触ってもいい?」
「いいもなにも、もう触っているではないか」
ぺたぺた、と、頭や顔を触りながら、ユリンが聞く。答える魔王も、嫌な顔一つしないで受け入れる。
勇者と魔王、ということを知らなければ、ただ仲のいい男女がじゃれ合っているようにしか見えない。
「なんというか、うん、もう疑いようもないくらいマグ兄なんだけど。
この何年かを思うと、頭では理解しても、気持ちがついてこないよ…。
ねえ、どうしてずっと黙ってたの?」
一通り触り終えたユリンは、目の前の魔王が紛れもなく自分の知る「マグ」であることを確信する。
だが、確信するほどに、今の状況が受け入れられないでいた。
「それについては、色々と事情があるんだが。
ひとまずは、お茶にしようじゃないか。
ラジー」
「かしこまりました。
では、勇者御一行さま、お好きな所へおかけになってお待ち下さい。
ああ、ラミー。お前は座る前にまずこっちを手伝え」
「はいよー」
思い思いに座る中、ラミーだけが魔王の副官と共にお茶の準備を始めていた。
「…………ちょ、ちょっと待って」
余りに自然な流れに、スルーしかけたユリンだが、すぐに我に返る。
「えーっと……ラミーって、ラジーさんと知り合い…?そういえば名前もにてるけど…」
「あれ?前に言わなかったっけ?
ボク、魔族だよ?ラジーはうちの兄デス」
答えるラミーは、なぜかちょっと自慢気だ。
「そういえば、前に言うてはったな~。ただの冗談かとおもてたわ~」
「……マグ兄?これも、説明してくれるんだよね?」
「ユリン…笑顔が、怖いよ…?」
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