第2話-4 旅の仲間 SideY

★ユリンは特別アイテム『勇者の武器』を手に入れた


「やっっっっったーーーーーー!!!!!!」

地下迷宮の最奥、大空洞と呼ぶにふさわしいほどの大きな空間に、ユリンの大きな叫び声が響き渡った。

レンデヴィーク城攻略を始めてから早半年。

何度も迷い、大きな怪我を負い、繰り返し挑み続け、ついに手にしたのだ。

叫ぶと共に大の字に倒れ込んだとしても、無理はないだろう。

「ふー、ついにやったな!ユリン」

「ようがんばりはりましたな~。かくいうあても魔力を使い切ってしもたけど。おもてたんよりも、守護者はん頑丈どしたな~」

倒れ込むほどではないにしろ、二人も力を使い切った表情で隣に座る。いつもはケンカの多い二人も、今はそれどころではないようだった。

「うん!ほんと、ありがとね!!

 でもあれだ、なんといっても今回のMVPはラミーだね!!」

寝転んだまま、ユリンが見る先には、

「ぶい」

とても満足そうな顔でVサインをするラミーが立っていた。

「ははっ、言えてら。ヒーラーのいない脳筋パーティだったからなー」

「ちょっと、ユリンはともかく、あては脳筋やあらしませんよ?」

「ともかく!って!!脳筋はスライクだけですぅー。こんな冷静沈着で聡明なユリンちゃんを捕まえて失礼しちゃうわー」


「…………わりぃな、ユリン。今、ボケに突っ込む気力ねーや」

「…………あてにもそないな余力は残っておまへん。かんにんな」

「…………うーん、ヒールが足りなかったかな?」


3人の息はピッタリだった。


「もー、ひっどいなー。ははは。

 それにしても、ラミーと出会ってまだ3日なんだよね~」

魔王城における秘密会議により派遣されたラミーは、3日前よりヒーラーとしてユリンの旅の仲間として合流していた。

たまたまラミーがヒーラーであったこと、脳筋……もとい猪突猛進パーティであったこと、がうまく合致し、出会った直後にユリンから勧誘されたのだ。

「ねぇねぇ、ラミー!私達と一緒に旅したいよね?」

実に強引な勧誘ではあったが、ラミーの目的からすれば渡りに船。

「ボクは、君と会うために生まれてきたのかもしれない」

返事の仕方は、どこかずれていたが…。


「ねぇユリン。その武器面白そうだよね。ボクにもさわらせて~」

ようやく体を起こせるようになったユリンが武器を撫でるのを見て、ラミーが羨ましそうに手を伸ばす。


バチッ


その瞬間、指先に電気が走ったような痛みが生じ、思わず手を引っ込める。

「ごめんねー。これ私専用らしいからさ」

触るぐらいはいいと思うだけどね~、と言いながら謝るユリン。

「ちぇ~」

痛みの残る指先に息を吹きかけながら、

(これたぶん、魔族に反応したんだろうなー)

と思いつつ、だが本当に残念そうに見つめていた。


「ああ、でも俺の装備も大分ボロボロだしな。新しいの見に行くかー」

スライクのもつ戦斧バトルアックスも、使い込まれてところどころひび割れており、刃こぼれも酷かった。

「せやなぁ。あんたさん、最後の方はその斧を鈍器みたく扱っとりしたなぁ。あての杖も、次のランクへの儀式をせなあきまへんなぁ」

カキツバタの持つ杖は、魔力を通わす程にレベルの上がるという魔法の杖マジックワンド。淡く光を纏っている今なら、儀式により次のランクへと上げることができるだろう。

「よし、そろそろ帰ろっか。私、お腹空いてきたよ」


新たな仲間、新たな装備を手に、勇者ユリンの旅は続く。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る