第3話 次の一歩

第3話-1 激突 SideM

--魔戦将軍テイラード自室


「くそっ!!!!あの小娘が!!!!!

『魔戦将軍といえど、こんなもんなんですね』だと!!!???

この俺様が、わざと手を抜いてやったっていうのが、わからんのか!!!!」

元々、王族の私室として使われていた部屋であり、それなりの調度品があった部屋が、見るも無惨な姿になっていた。

机も、椅子も、壁も、床も。

無事なものを探すほうが骨が折れるほどの荒れっぷりだった。

「お、おやめください、テイラー・・・ぶふぁ!」

あまりの惨状に、部下が止めに入ろうとするものの一切耳に入らない。

それどころか、その辺の家具と同じように薙ぎ払われるだけであった。


それから数時間。

もう、そこには壊すものがなくなっていた。

「はぁ・・・はぁ・・・。

よし、やめた。あのやろうまおうの計画を利用して勇者にあのアホを殺させようと思っていたが、回りくどいことは俺様には合わねぇ。

そもそも他人ゆうしゃなんかに任せるこたぁねぇ、俺が殺ればいいだけの話。

ムカツク小娘なんぞ、生かしておく必要ねぇな。

おい、アズラーはいるか!?」

魔王に脳筋と評されていた通り策を巡らすのが不得意なテイラードである。

力押しで行くことを決めた所で、副官を呼んだ。

「おい!アズラー!!俺様が呼んでるんだ、早く来い!!!」

しかし、いくら呼んでも返事はなかった。

それもそのはず、当のアズラーは、テイラードの癇癪に巻き込まれ、足元に転がっていたのだった。


「お言葉ですがテイラード様。勇者は魔王様にしか殺せない、と言う制約がございますが・・・」

復活し、テイラードから話を聞かされたアズラーだが、勇者の持つ特性を思い出し忠告をする。

「けっ、忌々しい勇者システムか。

なら、仲間を全部蹴散らしたあとに、封印するだけだ」

勇者システムという名の、呪いのような制約。

殺せないのであれば、閉じ込めてしまえばいいだろう。

単純ではあるが、確かに他に手立てはなかった。

「かしこまりました、では、封印術の使えるものを同行させるといたしましょう」

「おう、うまいことやっといてくれ。考えるのはお前に任せる。俺が気持ちよく暴れられるようにしとけよ」

「いつものように、お任せください」


数日後。

テイラードは勇者討伐に向け、城を後にした・・・。

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