24

一緒にバスルームに入ろうとする春馬を制して、ゆっくりと広い湯船に浸かと

バスルームの一面が窓から、朝日が眩しいくらいに差し込んで目を細めた。


「なぁ、美雪」


スモークガラスの向こう側から声がして、私は水音を立てながら少しだけ後退りした。


「ん?なに?」

「本当に一緒に入っちゃだめなの?」

「ダメだよ」

「なんでだよー。いいじゃん、ちょっとくらい」

「このバスルーム明るいから、絶対にダメ!」

「一晩中、裸で居たのに?」

「ベッドの上とバスルームは全然違うの。それにここ電気をつけなくても明るいもん」


春馬は「分かったよ」とあからさまに肩を落として、洗面所からいなくなった。


リビングに戻ると、ソファーの上でテレビを見ながらクッションを抱いて横たわる春馬が、視線だけ私に向けて、フイッとまたテレビに戻した。


「春馬。いじけないで?」


私は、春馬に目線を合わせるようにソファーの淵にしゃがんむと何度か声かけるけど、への字に曲がった口は元の形に戻らない。


「俺は、一緒に入りたかったの。風呂に」

「分かるけど……私にも事情があるから……」

「何?俺を突き放す事情って」

「突き放したつもりはないよ?ただ……明るいところでは裸を見られたくなかったの」

「俺は見たかったの」

「ダメだよ……」

「なんで、そんなに頑ななんだよ。おかしいじゃん。あんなに裸見てるのに、今更風呂は駄目って。前は一緒に入ってただろ?」


春馬の眉間が寄ってきてムキになりだしたから、埒が明かなくなる前に仕方なく事情を話す。


「だって、私……太ったから」


恥を忍んで、お風呂にいっしょに入れないワケを明かしたのに、真顔になった春馬は私の顔を見たまま何も言ってくれないから、無言の空間を埋めるようにより詳細に話し出す。


「春馬と別れてから体重計に乗ってなかったけど、この前久しぶりに乗ってみたら3キロは増えていたの。多分接待とかあるのに運動していないせいだと思う。自己管理出来てないところとか見られたくないじゃない。でも、あんなに明るいバスルームだったら、バレちゃうでしょ?だからイヤだったの」


一気に話をしたせいで、少し呼吸が乱れる。


きっと顔が真っ赤になっているんだろうな……私。


アイドルという職業柄、体作りを欠かさずちゃんと自己管理をしている春馬にこんな恥ずかしいことを言いたくなかったなと、今になって後悔した。


「はぁ……」


春馬の溜息が聞こえて恥ずかしさが増す。


「あー…。それで俺は一緒に風呂に入れなかったってこと?いや……全然気付かないレベルだよ?一体どこに増えたの?」

「……お腹とか、足とか……」

「……まぁ、女の子には大変な事なのかもしれないけど、男にとっては大したことじゃないよ?しかも、それが原因で俺の希望は儚くも散ってしまったワケで……むしろ、そっちの方が大事件で大問題だから」

「本当に……?見てがっかりするかもよ?」

「美雪はさ、暗い中での男の心眼を甘く見てない?それとも伝わってないの?美雪の身体を見て高ぶる俺の興奮が」

「えっ?」

「足りないって言われてるみたいなんだけど?」


春馬は体を起こすと、私を立たせ身を屈めて膝の裏に腕を滑らせるとふわっと抱き上げて


「キャッ!春馬っ?」

「早起きしたおかげで、まだ時間あるからね?」

「ヤダヤダッ!ちょっと、春馬ってば!」

「はいはい。分かったから。大人しくして?」


悪戯っぽく笑うと躊躇なく歩いて、光溢れる洗面所のドアを足で蹴る様に開ける。


私をバスルームの前で下すと、隙を与えることなく腰あたりで縛っていたバスローブの紐をヒラリと解いた。


「夢は願うだけじゃなくて叶えないとね?」


無色透明なお湯の中で、春馬の上に私が重なる様に浸かると


「ねぇ……春馬。重くない?」

「まだ気にしてんの?この浮力の中でも。で?いつまで隠すの?そんな小さいタオルで」

「えっ?だって……」

「美雪ってさ、分かっているようで分かってないよね?こういうことに関しては」

「ん?……何?」

「そんな顔赤くしてさ、恥ずかしがりながら隠されると、見たくなる。結局、煽ってんだよ……そうやって男を。気付いてんだろ?ほら……」


私に腰を当てて寄せると、後ろから前に手を回してくる。


「きれいだよ。すげぇキレイ」


くすぐったい。


「それに、増えたのってココでしょ?本当は気付いてたよ。触ると手に収まらないで、柔らかいのが余る感じあるから」


その両手はお腹から上昇して、両胸を下からすくい上げて包む様に触って、揉みだす。


「……んっ、春馬、ヤっ。ん」


その手つきに、徐々にいやらしさが加わって、お湯の中で蕩け出す実感が隠せないくらい感じてしまう。


髪が濡れないように上げているうなじに春馬の声と息が当たって鳥肌が立つ。


「寒い?そんなわけないよな……」


春馬は、私の肩の水滴を舐めると、次第にスイッチが入ったみたいにキスを落として跡をつけてく。


「美雪を取られたくないからね。誰にも」


いつの間にか、私は湯船の水面が激しく揺れる程……身体を揺らしながらが、春馬に跨って夢中で行為を続けると、私の高い声と春馬の低く短い声が反響して互いの耳に残って、興奮に拍車をかけた。


「あー……また、暴走した」


着替えてメークを終えてリビングに戻ると、春馬は頭にを抱えから、そのままズルズルとテーブルに伏せた。


「また、受け入れちゃった」


恥ずかしい表情を隠しきれない朝日の中、2人で笑い合いなが飲むカフェラテは甘くてほろ苦い……。


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