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受け入れがたい現実は、黒い雲が未来を覆い足もとさえ見えない状況を作り出した。


そんな2人を目の当たりにして、さすがにね、常に物事を斜めに見るオレも悟るよ。


美雪の決断がね。


あぁ、オレは選ばれなかったんだなと。


「まずは、おめでとう。メンバーとして春馬と美雪ちゃんを見守ってきたから純粋に嬉しいよ。……でも、恋愛だけでもタブーなのに、結婚ってなると影響は受けやすい。そこらへんのリスクはどうやって対処するつもり?とりあえず大まかな感じでも良いから教えてよ」


龍は、祝福しつつも冷静に春馬に目配せすると、話し始める春馬に被せるみたいにチーフマネージャーが一歩前に出て、


「龍の言う通りQuestとしては、この春馬の結婚が踏ん張りどころだ。発表まで、期間を設けているのも計画的に物事を進めるため。勿論、ここにいる限られた人以外は事務所内でも徹底的に口外無用。今後の流れは私から追って伝えますので、よろしくお願いします」


春馬と美雪の横で一礼した。


異論を唱える人なんていない。

全ては完璧主義の春馬の筋書き通りに、事は進んでいく。


オレは、携帯を取り出して前に出ている美雪にメールした。


「これが美雪の出した答え?」


どんな返答かなんて分かりきっているのにさ、送っている辺りが未練たらしいなんて言わないでよ。意気消沈中なんだからさ。

オレの目の前では、そんな安っぽいメッセージが既読になる事さえなく、召集されたスタッフは解散したり打ち合わせに行って、広い会議室にはメンバーと美雪の5人が残った。


椅子の背にもたれて、腕を組んで帰る隙を伺いながら床を見る。


傷ついてるのかな、やっぱ。


ため息さえも漏らさず、

ただ、オレはそこにいた。


「みんな、迷惑かける……ごめんな」

「謝ることないよ、順当に人生を歩んでたら起こるイベントの1つだろ?それに、謝るほど後悔してんのかよ」

「後悔してない。むしろ、美雪と結婚出来る事になって嬉しいよ」

「そっかー。なら、ハッピーだからいいじゃん!世間の目はあると思うけど、俺たちは応援してるから、ね!」


なんて言えばいいのよ。

オレは。


仕方なく、上を見て首を回しながら正面を向くと、携帯を握りしめた美雪が瞳に涙を溜めたままこっちを見てたから、何も言えず席を立った。


「イチ、どうかした?」


元気の問いかけにも、いつもの調子が出ない。


「先、帰るわ」

「なんだよ、イチ、さっきから黙って」

「別に。明日早いからさ」


今は何も話したくないし聞きたくない。自分勝手だとは自覚してる。

でも、このままじゃ良くない空気っていうのは、周囲の不信感として分かるから、結局は今後の活動を円滑にしたい気持ちが背中を押して、


「2人とも、おめでとう」


言葉を言い終えるタイミングで冷たいドアノブを引いて、閉めた。



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