第5話 暗黒神様、セクハラする


 他の兵たちをリアとアシュリー、そしてプルミエディアに任せ、私とミリーナとレラの三人で、レンとシイナを連れてそこら辺にあった部屋へと移った。その方が都合がいいからな。


「さて、ここは使っても問題はないかな?」

「はい。僕の部屋ですから」

「ほう、そうなのか。とりあえず、座っても構わないかね?」

「どうぞ、御自分の部屋だと思ってください」

「うむ」


 なるほど、ここはレンの部屋なのか。なかなかに広々としていて、物が散らかっている、と言うことは全くない。実に綺麗だ。

 お言葉に甘えて、私は椅子に座り、私の膝の上にミリーナが座った。

って、おい。初対面の人間が居るのだぞ。


「ミリーナ」

「ここがベストポジション!」

「お前な……まぁ、いい」

「いいんですか、ご主人様……」


 面倒なので説得を諦めた私。それに対し、何故か、レラが呆れたように呟いた。いや、呆れるならミリーナの方に呆れろ。私は悪くない。


 はっ……!


「…………」

「仲睦まじいですね。恋人同士なんですか?」


 目を丸くするレンと、何故だかテンションが上がっている様子のシイナ。こういうのが好きなのだろうか? 腕が立つ割に、なかなか乙女チックな趣味をしているな。

 まあ実際、乙女なのだが。


「こ、こここ恋人!? そ、そんなんじゃないよっ!? 何を言うのかなこの子は!」

「どもりすぎだ」

「いやいや、お二人は、恋人か夫婦にしか見えませんよ……」

「ちょっと、レラちゃんまで! わ、わわわわ、わたしとフィオは、こ、ここここい……。はわぁ~……」


 自分から来たくせに、頭から煙を出し、顔を真っ赤に染めるミリーナ。たまに、コイツが何を考えているのか、よくわからなくなる時がある。


 まあひとまずコレは置いておこう。


「改めて、自己紹介といこうか。私はフィオグリフ。で、こっちが私の奴隷の、レラだ」

「よろしく」

「奴隷、ですか……?」

「なんだか、そんな感じには見えませんね」

「そして、ここで故障している女は、ミリーナと言う。少々アホっぽいが、腕は確かだから安心しろ。何なら、手合わせしてみるといい」


 やはり、ぱっと見ただけだと、レラは奴隷とは思えないらしい。生き生きとしているからだろうな。どちらかというと、私の秘書であるかのような印象を受けるのだと思う。


 尚、ミリーナは相変わらず煙を噴いたままだ。いい加減復活しろよ。


「……僕は、レン・フォン・イシュディア。御存知かもしれませんが、アレクサンドル卿は僕の祖父です」

「私は、シイナ・フォン・イシュディア。レンは兄で、歳は四つ離れています」


 なるほど。となると、レンは19歳ということだな。若すぎもなく、老けすぎているわけでもない。ちょうど伸び盛りの年頃だろう。

 逆に、シイナの方はもっと遊んでいてもいい年齢だと思うのだが。ましてや、嫁に出て行く予定なのだし、何のために訓練を受けさせているのだろうな、アレクサンドル卿は。


 まあ、それはさておき。


「ミリーナ」

「はわぁ~……」

「おい、ミリーナ」

「はぅ~……」

「…………」


 ダメだコイツ、早く何とかしないと……。


 と、言うことなので、私の膝上に座っているミリーナの胸を、後ろから鷲掴みしてみた。

さすがにここまですれば帰ってくるだろう。


「ひゃうっ!?」


 うむ、形が良く、大きく、それでいて、私の手が沈み込むほどに柔らかい。実に心地良い。


「……ご、ご主人様?」

「な、何を……!?」

「キャ~! 人前なのに、大胆!」


 困惑するレラとレン。

 テンション高く、顔を手で覆うシイナ。だが 隙間が空いており、しっかりと見ているのがわかる。


「あ、あぁん……! ちょ、フィオ……! くすぐったい!」

「ああ、戻ってきたか」

「あっ、離しちゃうんだ……」


 ミリーナが再起動した事を確認し、彼女の胸から手を離す。何故だかちょっと名残惜しそうだったが、もっとやってほしかったのだろうか。


「「…………」」

「仲が良くて、羨ましいです……。私も、素敵な人を見つけられたらいいなぁ……」

「フィオとわたしは友達だからねっ!? そこら辺間違えないようにっ!」

「「友……達……?」」


 む? 何故そこで首を傾げるのだ。


 で、えーと。なんだったか。



 ああ、そうだ。


「ミリーナ」

「な、なにかな?」

「レンとシイナ。この二人と、手合わせしてみろ。無論、殺さないように気をつけろよ」

「あ、うん。わかった」


 訓練の様子は見ていたが、本当の実力がどの程度なのか、はっきりとわかったわけではない。私がよく知るミリーナと戦わせてみることで、それを測ろうと言うわけだ。


「僕たち二人がかりで、ですか?」

「そうだよ~。ああ、本気でかかってきていいからね? わたしを殺すつもりでおいで~」

「…………」


 相変わらずフードをかぶっているが、ミリーナは一見、か弱い女としか思えんだろう。そんな彼女に対し、“殺すつもりで”というのは、二人とも些か躊躇いがあるようだ。


 甘いな。これが若さという奴か。


「では、訓練所に戻りますか?」


 レラがそう提案してきたが……。


「いや。ミリーナ、わかるな?」

「もちろ~ん! わたしにお任せ!」


 却下だ。訓練所ではなく、異空間を使うつもりだからな。あそこなら、いちいち周りの被害を気にする必要がない。


「訓練所を使わないって、それでは……?」

「まぁ、目を閉じて、耳も塞いでてよ! サプライズって奴を見せてあげよう! 何より、あそこならわたしもフード取っていいしね!」


 最後を強調し、先ほど私が揉みしだいた胸を反らせるミリーナ。さすがのコイツも、街中でフードをかぶる不審者ルックは堪えるらしい。

 何故サプライズにする必要があるのかは知らん。たぶん大した意味はないだろうがな。


 何せ、ミリーナは基本的にアホだ。

そういう点では、アシュリーと似ているな。

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