第6話
イマイチ持ちなれない木刀
進まない足取り
見慣れない風景
微かに震える体
体の全てが自分の物とは思えないぐらいに重く、
つい先程まで、自分がいた世界と同じとは思えないほどに、
空気がドロドロと絡み付いて俺を潰そうとする。
そんな気がする。
【アレ】とまた対峙するのか…
あぁ…短かったけど…
ありがとう俺の人生。
そんな悲壮感MAXな覚悟を溢れさせながら、
恵嗣はペタペタとみんなの後ろにくっついて行く。
————
「どうした恵嗣。
そんな世界の終わりみたいな顔して。」
「いや…吐きそう…」
「しっかりしてくれよー
一応今日は見学みたいな感じで楽にさ。」
そう言いながら29歳の男性教師—菅野輝光は恵嗣にドヤ顔混じりの笑顔を向ける。
「多分俺は死にます。
死にます死にます…。」
「はぁ…男ならどっしり構えてろって。
あの4人がいるかぎりお前は絶対死なないから。たぶん。」
輝光は歩きながら、
また恵嗣の肩を揉む。
「わかったよ…いやわかってるけどやっぱり…」
そういつまでも渋る恵嗣をよそに、
前を歩く4人は比較的堂々と歩いていた。
どうやらこのまま地下へ行くらしく、最上階から階段でちょこちょこと降りて行く。
この学校に地下がある事にまず驚いたが、そんな初耳情報も輝光はサラッとドヤ顔で告げてくる。殴りたい。
その途中で、なにやら物騒な火気類を装備した由絵と、バットほどの長さの杖のような物を持った千乃が恵嗣の方を振り向き、
「キムさん…大丈夫?
顔真っ青だけども、」
由絵がその装備とは不釣り合いな顔で、恵嗣を気遣う声をかけた。
「だいじょぶだいじょぶ、若干ね、吐きそうだけど…」
「キムさんチキンだなwwww
まぁうちらついてるから大丈夫だってば!!
ねぇあかちん?」
「まぁねっ!!いけるいける!」
「だっしょ~ww」
智景と茜子も一応気を遣っているのかからかってるのか、
この2人はどっちかわからないが…
それでも恵嗣には4人の声が今は何よりも心強く感じた。
そんな会話を聞いているうちに、腹も根性も据わらないまま地下に到達してしまった。
地下への入り口は、
核兵器でも防げるんじゃないかっていうようなシェルターのように分厚さを感じる金属のシャッターで、
特進校舎と普通校舎しを結ぶ渡り廊下など比べ物にならないほど物々しい雰囲気を醸し出していた。
その大きな扉の前に4人が並び、それぞれが武器を構える。
智景はメリケンサックのような物をしていて、何やらポワッと淡い光が拳を包んでいて、
茜子は全ての指に大きな宝石がついた指輪をはめている。
由絵はスナイパーライフルを背中に背負い、腰には拳銃やら火気類をぶら下げている。
千乃は細身の杖を握っていて、それ以外には特に見当たらない。大丈夫か。
ちなみに輝光は長めの刀を腰に一振下げていた。
女の子がこんな装備をしている光景自体が衝撃的なのだが、
この4人、
制服のままなのが余計に妙な威圧感があった。
いつしか4人の会話が一旦止まり、
精神統一のような少しの澄んだ間があった後、
智景が最初に口を開く。
「ちっぴー、最初はいつも通りで!」
「うん、大丈夫だよ。」
「じゃあ、行くよ?
テルさんはキムさんの事よろしく、」
由絵のその声に
輝光と3人とが頷き、
それを見た由絵は大きな鉄の扉の横にあるカードリーダーに何かのカードを通した。
ガコーン
ゴゴゴゴ…
そんな荘厳な音をたてながら、扉がステージの幕のように上へと開いていく。
恵嗣はギュッと、
震える手を抑えるように、木刀を握る掌に力を込めた。
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